[コメント] オーバードライブ(2013/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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この作り手たちは、僕らが「ドウェイン・ジョンソン」というキャラクターに抱くイメージを、間違いなく利用するために彼を起用したと思う。序盤、いかにもそんな感じで話が進展するのだ。だが早々に、あっけなく暴力に組み伏せられてしまう。あれ?いつもと違うじゃん─!?
それでもすっかり諦めさせられたり、失望させられたりすることはなく、僕らの期待感は正確に推し量られて上手にコントロールされて行く。最終的には「今日はいつもの『ロック様』ではないんだな」というところまで納得しながら着地させられる。作り手たちのこの匠の技みたいのがまず凄いなと感心させられた。
その上で。率直に言って、「冤罪」ではないにせよ、素人同然の若者を麻薬密売人に仕立て上げるような司法制度が、極悪非道な麻薬カルテルを真に追い詰め得るとは思えない。これはアメリカ司法制度の、つまりはアメリカ社会の欠陥だ。また、この少年の場合はたまたま父親がドウェイン・ジョンソン的な(!)人物だったから良かったにせよ、一般化できるわけでも推奨できる話でもない。常識的にはこんな父親は捜査の妨害以外の何物でもない。でも。
社会がイメージする理想像としては、理解できないものがなくはない。それまで駄目息子、不甲斐ないヤツと見ていた息子を尊敬し、そんな息子のためにこそ、自分の力を信じ、自分にできる最大限を尽くそうとする、その姿は。間違いなく、二度目の面会時の台詞「息子よ、父さんはお前を尊敬する。お前は友を売らなかった。父さんにはできなかったことをお前はした。人の尊厳をお前から教えられたのは父さんの方だ。愛しているぞ、息子よ。」が物語の核となっている。
何というか、映画ってやっぱコミュニケーションなんだなあという感想。作り手側が何を伝えようとしているのか、あるいは何かを伝えようとしていると分かるだけで面白い。
85/100(24/2/19記)
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