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[コメント] オーバードライブ(2013/米)

ドウェイン・ジョンソンというイメージに翻弄されつつ、作り手たちには伝えたいことがあるのだなということが伝わってくる作品。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 この作り手たちは、僕らが「ドウェイン・ジョンソン」というキャラクターに抱くイメージを、間違いなく利用するために彼を起用したと思う。序盤、いかにもそんな感じで話が進展するのだ。だが早々に、あっけなく暴力に組み伏せられてしまう。あれ?いつもと違うじゃん─!?

 それでもすっかり諦めさせられたり、失望させられたりすることはなく、僕らの期待感は正確に推し量られて上手にコントロールされて行く。最終的には「今日はいつもの『ロック様』ではないんだな」というところまで納得しながら着地させられる。作り手たちのこの匠の技みたいのがまず凄いなと感心させられた。

 その上で。率直に言って、「冤罪」ではないにせよ、素人同然の若者を麻薬密売人に仕立て上げるような司法制度が、極悪非道な麻薬カルテルを真に追い詰め得るとは思えない。これはアメリカ司法制度の、つまりはアメリカ社会の欠陥だ。また、この少年の場合はたまたま父親がドウェイン・ジョンソン的な(!)人物だったから良かったにせよ、一般化できるわけでも推奨できる話でもない。常識的にはこんな父親は捜査の妨害以外の何物でもない。でも。

 社会がイメージする理想像としては、理解できないものがなくはない。それまで駄目息子、不甲斐ないヤツと見ていた息子を尊敬し、そんな息子のためにこそ、自分の力を信じ、自分にできる最大限を尽くそうとする、その姿は。間違いなく、二度目の面会時の台詞「息子よ、父さんはお前を尊敬する。お前は友を売らなかった。父さんにはできなかったことをお前はした。人の尊厳をお前から教えられたのは父さんの方だ。愛しているぞ、息子よ。」が物語の核となっている。

 何というか、映画ってやっぱコミュニケーションなんだなあという感想。作り手側が何を伝えようとしているのか、あるいは何かを伝えようとしていると分かるだけで面白い。

85/100(24/2/19記)

(評価:★4)

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