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[コメント] 劇場版 ラジエーションハウス(2022/日)

地球全景からズームインのようにワンカットで地上に寄る導入ショット。続いて壁の話。油絵イメージの背景、綺麗な草花の道を歩く窪田正孝本田翼
ゑぎ

 プロット、というよりも科白を通じて壁の象徴性が全編に亘って支配しているが、同時に本作は、水の映画だ。特に前半は雨の映画だ。

 本作の舞台は横浜の甘春総合病院と離島・美澄島のほゞ2か所だけだが、美澄島のシーンは、外連味たっぷりの華麗なカメラワークが目白押しだ。大移動カットのオンパレードなのだ。例えば、港のドローン俯瞰から、診療所まで寄ったり、トラックバックしながら島の遠景までワンカットで見せたり、診療所の中から後退移動して、閉まっているドアの窓を擦り抜け、表へ出る、といったヒッチコックみたいな移動ショットがあったり。勿論ワタクシ的には移動大好きなので、楽しかったが、ちょっと題材に対して、はしゃぎ過ぎな印象も受けてしまった。尚、美澄島のシーンは、桟橋や「ようこそ」ゲート、島の案内板(簡易地図)の造型など、美術もとても良いと思った。

 前半は、山口紗弥加の地元の後輩という山崎育三郎が、プロットを駆動する部分が多いけれど、山崎は登場する車中のショットからアップが醜い。誤解されないようにきちんと書いておくと、山崎自身ではなく、構図が醜いのだ。なので、やはり酷いプロットを導く。ただし、彼が「雨」を連呼する場面で、フラッシュバックが挿入されたのには、不意を突かれ、ちょっと感動してしまった。山崎の妻を演じている若月佑美が、寝たきりショットばかりで可哀想と思っていたから、というのもある。

 加えて、前半は美澄島のキムラ緑子、甘春病院でカテーテル手術を受ける男の子−川原瑛都の2人に対する処置の場面も盛り込まれるが、対応技師のフォーメーション、例えば、川原瑛都の手術には、広瀬アリス一人が対応し彼女の独り立ちが描かれる、など、上手くプロットを繋いで面白さを持続させていると思う。

 水について、もう一つ特記しておくと、序盤から、井戸、井戸水のしずくをこんなに強調するのは、宜しくないと思った。テレビドラマ的な演出ではないか。映画の画面、という点でいいなぁと思ったのは、7人の技師の机を横一列にシネスコサイズいっぱいに見せたショットだ。あと、人物のショットでストップして、ネガ反転のようなレントゲン写真イメージに切り替える処理については、映画館の画面サイズで見ると、綺麗じゃないと思った。特にラストの窪田と本田のショットでこれをやられた時にそう思った。

#川原瑛都くんはテレビドラマなどでも見かけるが、『死刑にいたる病』にも出ていた(傷つけ合う兄弟の弟)。彼は、Eテレ「にほんごであそぼ」のスター。

(評価:★3)

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