[コメント] コットンテール(2024/日=英)
序盤はずっと手持ちの画面。電車の中や市場を歩くフランキー。寿司屋に入って、持参した極上の蛸でもって握ってもらう。ビール。こゝで、玄関扉がフォーカスアウトした中、女性が入ってくる。恒松祐里が浮かび上がるように登場するのだ。このフラッシュバックでは、手持ちのショットは無くなる。
恒松の造型がいい。登場から木村多江を彷彿とさせるような演技をする。しかし鮮烈な造型だ。ペンダントの飾りは小さなウサギ。フランキーの若かりし頃−工藤孝生に英語の発音を聞く。ラビット。子供のとき、イギリスにいた父を母と一緒に訪ねた。
タイトルはウサギの名前。ピーターラビットに出て来る4匹の子ウサギの1匹(ピーターの妹)。フランキーの息子−錦戸亮の妻−高梨臨が子供に絵本を読む。私が昔読んだ記憶では、確かピーターたちのお父さんはパイにされて人間に食べられたんだと思う。そんなブラックな挿話を想い出してしまった。
本作のリリー・フランキーは自堕落かつ自分勝手というかなり酷い父親だ。詳述しないが、2回窃盗をはたらく場面もある。メインのプロットは、妻−木村多江が残した遺言をかなえるべく、息子家族と英国のウィンダミア湖へ行く旅の過程を描いたものだ。日本の場面から、いきなり、ロンドンに4人いる、というこの省略の作劇がいい。さらに、フランキーが一人で列車に乗り、行き先を間違っていて下車するが、道に迷って大木の下で過ごす、という展開に持っていくのがいいと思う。キアラン・ハインズ親娘との出会いを導く。こゝが牧場で、馬のいる画面を作る。
また、ウインダミア湖に到着し、合流した息子−錦戸に、ありがとうと云うのは、ハインズ親娘に感化されたのだろうと思っていたが、その後も、ごちゃごちゃと確執を描くのは、少々まどろっこしく感じる。また、後半のフラッシュバックはもういい加減にやめて欲しいと思う。それは映される内容のことではなく、純粋に回数のこと(過多であること)、フラッシュバックにより、メインのプロットのリズムが壊されることを指している。
ただし、フラッシュバック過多ではあるものの、恒松と工藤の(フランキーが若い頃の)日本の湖でのシーンなんかもとてもいいし、木村の熱演にも心打たれる。一方でずっとフランキーの顔を見せられる映画でもあるが、予想していた以上に彼の顔演技には見応えがあったし、錦戸の顔もトニー・レオンみたいと思いながら見た。あと、日本語の科白のこなれ具合は大したもので、これは特筆しておきたい。ラストシーンも良い造型。その地勢の見せ方がいい。
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