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[コメント] パリは霧にぬれて(1971/仏)

導入部が美しく、これだけで一篇の映像詩。本篇も、柔らかな光による映像が見事なのだが、詩的な画で描かれるにも関わらず、プロットは凡庸。「水」が反復されているのも昇華されず、仕掛けられた謎の回収の仕方も平板。
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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導入部が船のシーンであることに始まり、本篇内にも水面の波紋を捉えた抽象的なカットがあったり、ジル(フェイ・ダナウェイ)が水を描くのを好む画家であったり、更には、子どもが河の傍で行方不明になるなど、「水」がフューチャーされている割には、それが何か象徴的な域に到達するわけでもない。

ジルの記憶喪失が、実は夫が秘密にしていた産業スパイとしての活動によって「組織」に目をつけられたせいであるという設定も、ジルの担当医である精神科医による「シンシア(バーバラ・パーキンス)が嘘をついているのでは」という指摘がそのまま正しかった、という呆気ない真相に到る。この記憶喪失にまつわるプロットは、巧く活かせば夫婦の葛藤のドラマを演出する素材ともなり得た筈なのだが。

(評価:★3)

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