[コメント] 青春(2023/仏=ルクセンブルク=オランダ)
『苦い銭』に続くワン・ビンの本作では若い労働者たちの「職人としての技と矜持」に焦点が当てられる。彼らはミシンと布を流麗に操り出来高制の縫製作業のスピードを競い合い、決して清潔とはいえない共同寮(?)で“青春”ならではの喜怒哀楽を謳歌しているようだ。
仲間どうしで作業の難易度と一着あたりの工賃の多寡を喧々諤々議論し合い経営者と交渉する。その「若き熟練労働者」の生活をかけた遠慮なき逞しさに驚かされる。と同時に派遣社員制度という高度な搾取システムに組み込まれた日本の非正規雇用労働者のどん詰まり状況に暗澹とする。
映画の終わりに本作は2014年から2019年に撮影されたと表記される。するとこの直後に、世界は新型コロナウイルス禍に襲われ、彼らは中国政府による厳し行動制限にさらされたことになる。中国では世界でも例をみない極端な封鎖政策のため500万社の中小零細企業がつぶれたと聞いたことがある。あの屈託のない若者たちは、いまどこでどんな生活をしているのだろうか。
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