[コメント] 天間荘の三姉妹(2021/日)
ただし、開巻は大島優子の顔アップで独白。後景に門脇麦が入り、ちょっとパンするので、鏡と分かる。そこから、天間荘の中を歩く二人を移動撮影で追うが、途中、寺島しのぶと絡ませて、調理場のドアまで。次も同様に長回しショットで、調理場の門脇、中村雅俊、高良健吾から、門脇が高良の手を触る所作を見せ、大島と門脇が玄関前へ出るまでを移動撮影する。この冒頭2つのシーケンスショットは全く見事だ。さらに、大俯瞰で、海岸沿いの道を行く自動車を繋ぐ、というセンスにも唸る。と云うワケで、この映画の(真の)主役は大島優子と柳島克己(撮影者)なのかも知れないと思わせるオープニングだ。
しかし、まったく予備知識なく見たので、まさか、こんなファンタジーだとは思っていなかった。特にファンタジーを成立させるために、後半はCG処理の連続だが、これがイマイチなのだ。大林映画みたい。ドラマ部分の撮影の端正さ、美しさと比較してしまうからかもしれないが、動きのある場面のCGが汚いと思った。例えば、津波の表現、あるいは、海中に沈んでいく「のん」の表現。対して、高良が朝日に向かって出航する場面の超ロングショットは美しい(こゝも、CGでしょう)。高い断崖の上から、雲海の下に町と海を臨む画面は、まあまあ。
あと、柳葉敏郎と高良が一緒に映っている場面は、柳葉の回想か?と思っていたが(この二人のシーンでも鏡を上手く活用する)、三ツ瀬水族館の館長−平山浩行の子供の扱いを見ると、世界観に混乱が生じているように思う。このあたり、いい加減な対処ではないか。また、天間荘の逗留者−三田佳子と山谷花純(ユナちゃん)が退場すると、テンションが下がってしまったのだが、この二人に対する「のん」の一連の場面が本作のもっとも楽しい部分だろう。特にユナちゃんと「のん」が友達になるシーン(水族館からの帰り)、ここの「のん」の明朗さは、本当に「のん」らしい。またこのシーンの光(太陽光)の扱いも特筆すべきだ。
三田と山谷の退場以降、上で書いたCG処理も増え、大方予想がつく終盤も、蛇足になるのではないかと危惧したが、実はそうでもない出来なのだ。それは、何と云っても、三ツ瀬水族館での再デビューシーンにおける「のん」の顔がいいという点が大きい。これには惚れ惚れする。また、見終わって振り返ったとき、「のん」以外の主要人物も、皆、ほゞ均等に役割と見せ場がある、という点でも満足感がある。
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