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[コメント] 白日青春 生きてこそ(2022/香港=シンガポール)

なぜオレはアンソニー・ウォンをこんなに好きなのかを考えながら観ていた。
ペンクロフ

だって普通に見たら、コワモテのおっさんなのにまつ毛長くて目がキラキラしてて気持ち悪いじゃないですか。

演技者として非常にすぐれているのは確かなんだけど、芝居のうまさは我々の目に見える表面部分にすぎず、しかしアンソニー・ウォンって明らかにそれだけじゃない、何かただならぬ雰囲気を持ってるでしょう。今こういう場面だからこういう芝居を完璧にうまくやってるんだけど、それとは別になにか膨大な背景のようなものを常に感じ続けることになる。アンソニー・ウォンの凄さってたぶんこれなのだ。

以前オレは『ラ・ラ・ランド』のコメントで、エマ・ストーンシルヴェスター・スタローンの顔面情報の比較から「奥のない役者」と「奥のある役者」について書いたことがある。役の感情を顔面の表情で表現しきれてしまう役者には奥がない。ある水準を超えたすぐれた映画においては、我々観客は役者の顔面の向こう側に踏み込んでそこにいる人間と出会う必要があるのだ。ララランドのエマ・ストーンは表情を作って見せるのは(アニメのキャラクターのように)うまいが、それゆえに人物の奥ゆきというものを失っている。サービス過剰がいいとは限らない。

なんでもない場面でアンソニー・ウォンがふと見せる、なに考えてるかわからぬ仏頂面。彼はいつも佇まいのどこかに幾ばくかの「不可解さ」をたたえており、これはどういう人間なんだろう、わかりたい、でもすべてはわかるまいと思わせてくれる。最高の役者だと思います。

(評価:★4)

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