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[コメント] 左手に気をつけろ(2023/日)

天才井口奈己新作は43分の中編。30分の中編『だれかが歌ってる』(19年)と併映。等身大の目線の変化を感じる。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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寡作の井口奈己。長谷川和彦じゃないんだから。

ニシノユキヒコの恋と冒険』以来5年振りに撮ったのが30分の中編『だれかが歌ってる』、そこから4年振りの43分の新作中編『左手に気をつけろ』が本作。この2本、うすらボンヤリ繋がってます。(映画館での上映は併映でした)

男だ女だ言っちゃいけない時代ですが、私は井口奈己を「男が逆立ちしても描けない何かがある」と感じています。そして、「等身大の目線で感覚的に切り取る」天才肌の監督だと思っています。自然体と言ってもいいのかもしれません。

そんな彼女が見つめていた先が、20年前の『犬猫』の頃は「異性」だったんですよね。それが年齢を経て、彼女の「等身大の目線」が向いているのは、子供や街や音楽なんだなあ、ますます自然体だなあ、という印象です。街なんてさ、松陰神社前や経堂を中心に、北は下高井戸、南は渋谷や早稲田辺りの範囲で撮ってるからね、2本とも。自然体の生活圏。

音楽が象徴的で、2作品とも演奏シーンがあるんですけど、演奏前のチューニングや音合わせから始まって、自然に演奏に入っていくんですよ。この映画自体がそんな感じなんです。 観に行った際に舞台挨拶もあって、井口監督は「公開する予定もなく自主映画感覚で撮っていた」と話していて、何か納得するものがあったんです。井口奈己は映像だか演技だかの学校の講師をされてるんですよね。そのワークショップの延長のような感じだったのかもしれませんが、なんとなく始めた音合わせから曲が産まれるように、映画も出来上がっていったような感じ。

まあ、マダムロスというミュージシャンの演奏は、自然体と呼ぶにはほど遠い異次元感がありましたけど。

(2024.06.09 渋谷ユーロスペースにて鑑賞)

(評価:★3)

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