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[コメント] オルフェの遺言(1960/仏)

押井監督の『Talking Head』ってこれの影響下にあったのかな?可能性はありそうだ。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 実は現時点ではコクトー作品は本作が唯一なのだが、表題の如く“遺書”として作られた本作には感服した。

 本来芸術家としてのコクトーの私的映画であり、他人に分かってもらおうとして作られたものではない。故にこそ明確さを欠き、個人哲学に基づいた不条理きわまりない作品となっている。

 …の、だが、この美しさ、緻密な描写能力はどうだ。

 フィルムの逆転により、不可逆な生→死を逆転させ、時間旅行によって時空を超越する。映画の登場人物が実態を持つ。更に神と会話する。と言ったように、常識を根底から突き崩し、それら全てが自分自身の上に降りかかっているものとして捉える。つまりはこれこそがコクトーの内面世界そのものって事なんだろう。それを表現しようとし、ある意味で成功しているのだから凄いもんだ。

 いくつかロケも使われているが、基本的に舞台がむき出しの映画の製作スタジオで作られているというのも面白い。こんな私小説みたいな作品なのに出てくるキャラが豪華なのも良い(分からなかったけどピカソも出てるそうな)。監督の交友関係の深さ(広さじゃなくて)も窺える。

(評価:★5)

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