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[コメント] ドライブアウェイ・ドールズ(2023/米)

1999年。フィラデルフィアから始まったプロットはタラハシー(フロリダ)へのロードムービーとなり、エンディングではマサチューセッツへ旅立つという2人のヒロインの軌跡が描かれる。ちなみに序盤でY2Kという言葉が表す当時の空気への言及がある。
ゑぎ

 もっとも、最初に登場する人物は、バーの通路を前進移動したカメラがボックス席からちらっと覗かせた顔(頭部)をとらえるペドロ・パスカルで、本作は彼の顔(頭部)の映画である、という側面もある。あるいは、彼が大事そうに抱えているアタッシュケースの中身に関する映画だ。ちなみに、彼の役名を英語の映画サイトなどで確認すると、けっこうなネタバレになっていると思う(なので、未見の時点でこれをすることはお薦めしない)。

 2人のヒロインはジェイミー−マーガレット・クアリーとマリアン−ジェラルディン・ヴィスワナサン。実は本作のプロットのメインは、奔放なジェイミーによって堅物のマリアンが性的に解放されるプロセス、というべきだろう。並行して、上に書いたパスカルとアタッシュケースを追うギャングたち(そのチーフを演じるコールマン・ドミンゴが相変わらずの存在感)、といったクライム要素が描かれる。そんな中で、ジェイミーの元カノ−スーキー−ビーニー・フェルドスタインが、本作でも良い働きをするのだ。

 ただし、スーキーの正体の見せ方は面白いけれど、もっとぶっ飛んだキャラかと思っていたので、その可能性が縮小したようにも感じられてしまった(それに私は、この女優−フェルドスタイン、依然あんまり好きにはなれません)。

 さて、ダッチアングルや凝ったワイプの多用など、せわしない画面造型には辟易せられたところもあるのだが、ズームはほとんど無い(多分1回ぐらいしか無かったと思う)のはいいし、スロー(マリアンの少女時代のフラッシュバック、ドッグレースで疾走する犬のショットなど)の挿入や、ジェイミーのフラッシュバック(もしくは夢)の映像かと思わせておいて、結局、誰のフラッシュバックでも無い(強いて云えば、マット・デイモンのフラッシュバックか)、サイケデリックなイメージ処理(マイリー・サイラスが若い男の股間を弄ぶシーン)なんかには、思わずニヤケてしまう面白さを感じた。

 そして、私が最も良いと思ったシーンは、サッカー女子たちのパーティシーンで、リンダ・ロンシュタットの「ブルーバイユー」が流れる場面だ。こゝが最も感動的なのは、2人のヒロインの変化がとても繊細に描かれているからだ。あるいは、フロリダのホテルで「ユー・ビロング・トゥ・ミー」がBGMでかかる中、2人がダンスすることになるシーン周りもいい。いずれにおいても、ジェイミー−マーガレット・クアリーはカッコいいと思うし、マリアン−ジェラルディン・ヴィスワナサンは愛らしい。

 一つ決定的に残念な部分を書いておくと、2人のヒロインのいずれにも胸の露出が無いということで、少なくも2シーンは、かなり期待させる流れでもあったのに、これを実現させてくれなかったのは、私にはマイナスポイントだ(これでいいじゃないか、という意見も勿論あるだろう)。マーガレット・クアリーは、他の映画では(クレール・ドゥニの新作なんかでは)、ヌードになっていることを考えると、この違いはコーエンの妥協のように感じられてしまう(もう一度書くが、これでいいじゃないか、という意見も勿論あるでしょうが)。

(評価:★3)

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