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[コメント] 梟ーフクロウー(2022/韓国)

暗い中、子供を負ぶって走る男。門をくぐると、城郭のような建物が見える。朝日がさしてくる。当然ながら、このプロローグに後半あたりで戻ってくるのだろうと思いながら見る。
ゑぎ

 というワケで、冒頭プロローグの時間にどう戻るのか、子供は誰なのか、というのが見ながらの懸案事項になる。最初は、子供は主人公の鍼医の弟かと推測するが、世子(王の後継ぎ)の子も出て来る。

 実は、前半は、なかなかエンジンのかからない演出だなぁと思いながら見る。今、思い出そうとしても、中盤まで、ほとんど見せ場と云える画面がないと思う。例えば、鍼医を宮殿まで連れて行ってくれる先輩のコメディパートや女官への恋慕なんて描写もイマイチ中途半端だし、世子と妃の清からの帰還シーンなんかも思わせぶりで期待させるが、思いの外スケールが小さい。また、光があると盲目だが、無くなる(暗闇になる)と、ある程度見えている、という鍼医の状態の見せ方(その意味の見せ方というか)は、この人は、どこかの間者なのかと思ってしまった。

 しかし、御医(医長のような王の主治医)が、鍼医の目が本当に見えていないことを確かめるため、その瞳へ針を突きつけるショット(ポスターなどの各種宣材にも使われている意匠)には驚かされた。この後の、巻き込まれ型プロットの畳みかけは素直に手に汗握るものだ。足を怪我した鍼医が、その捜査(検問)から逃れる部分の描写はイマイチだとも思ったが、世子の妃へ拡大鏡を見せる展開と、さらに、鍼医が王の施術中に世子の妃が乗り込んでくる場面の迫力はいい。こゝは全編で最も緊迫感のあるクライマックスと云ってもいいシーンだろう。

 本作の魅力ということで、私が一番にあげたいのは、この世子の妃の身の振り方と顛末の奥深さだ。例えば、上記クライマックスとも云うべきシーンで、声を荒げたりしない、それは、その場で真実を暴くことを、ある瞬間に諦めた、ということだが、この複雑な感情の描写(子供のことなどが去来したであろう)が、緊迫感に寄与している部分は大きい。

 そして、エピローグの展開はワタクシ的には平板でつまらないものだと感じる。これで溜飲が下がる思いをする観客も多いのかも知れないが、私は全く逆のエンディングであることを期待しながら見た(いろんな逆のパターンは考えられると思いますが)。

(評価:★3)

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