[コメント] めくらやなぎと眠る女(2022/仏=ルクセンブルク=カナダ=オランダ)
キャラクターは記号的にデフォルメされた美男美女ではなくリアルな動きも実写映像から描き起こしたのだろう。ほぼダイアローグで構成された台詞も生身の役者の声音と抑揚(日本語版で鑑賞)で交わされる。アニメでありながらアニメ的な約束ごとは周到に排除されている。
そんな現実(実写)と非現実(アニメ)のあわいに共存する語り口の生々しさが原作特有の日常のなかのファンタージを担保して村上春樹ワールドの映像化に成功している。
なんと言っても、すべての輪郭線が等価に描写された人物の「顔の造形」が効いている。小学校の高学年が授業で互いの「顔」を写生し合ったときの絵のように、残酷なほどにリアルになぞられた“顔の線”はリアルを超えてリアルなデフォルメの域に達してしまう。このリアルの先に否が応にも生じてしまう非リアルとは、突然生じる日常がはらんだ非日常性と同質であり、まさに本作の主題そのものだ。
異なる六つの短編で再構成された脚本の完成度も見事でした。それぞれの逸話は読んだ憶えがあるのですが、いつの時代のどの短編集だったか・・・すっかり忘れてしまいました。
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