[コメント] セールス・ガールの考現学(2020/モンゴル)
映画を見終った人むけのレビューです。
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初めて観たモンゴル映画。ある意味、モンゴル版『プラダを着た悪魔』。
ありがちな少女の成長譚と言ってしまえばそれまでですが、見知らぬ国の映画だということと、予想外に(?)巧みな映画的描写で、めっちゃ楽しんだんですよ。映画の導入部からテンポが良いし、犬のクダリなんか最高だ!
モンゴルといえば遊牧民で、広大な草原のイメージがありますが、この映画は「都会派」。首都ウランバートルの今時女子の迷える青春。モンゴルの都会は初めて見る世界だったのですが、ではこの都会がモンゴル社会にとって当たり前かというと、映画を観る限りそうでもないらしい。主人公の家族だって都会に出てきて10年程度らしいし、まだまだ草原で物売りをする親子がいたりする。この女社長だって、ひと財産築いたのはどうやらロシアでのことらしい。
こうした描写から、私は「少女も国家も垢抜けていく物語」だと思ったんです。ラストシーンなんかまさに、垢抜けていく少女とこの国を重ね合わせたようでした。
主人公の女の子は絵を描きます。彼女は、窓の外を見てサッとカーテンを閉め、それから絵を描きます。後々、彼女が飛び降り自殺を目撃してしまったことが明かされます。おそらく彼女はこの窓からそれを目撃したのでしょう。そして彼女の描いている絵は、きっとその死体なのです。そう言えば、モンゴルでは「流れ星は死者の魂」だと言い伝えられていると何かで読んだ記憶があります。
この映画は、こうしたことを言葉にしません。女社長は雄弁に語りますが、主人公の少女はひたすら困った顔をするばかり。この手の「思春期映画」は往々にして「自意識痛い系」になりがちなんですが、この映画はそうではありません。むしろ「自己のない」主人公。そんな彼女が自己表現の場を見つけるまでの成長譚なんですが、これは今時なんですかね。
余談
モンゴル語が、文字はロシア語に近く発音は韓国語に近いことにビックリした。もっと中国の影響を受けている国かと思った。世界はまだまだ知らないことが多いな。
(2023.05.05 ヒューマントラストシネマ渋谷にて鑑賞)
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