[コメント] 憐れみの3章(2024/英=米)
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乾いたルックは原点回帰で、これが良いのだという方も多かろう。ランティモスの黒いユーモアにはこれがやはり適合している。ロータリーで繰り返しR.M.Fを轢くシーンの引き笑いと戦慄の凄み。危うい可笑しさのあるプレモンスも新しく、全編通して「思いついてもやらんよなあ」「相変わらずようやるわ」と呆れたが、どうも「やっぱ頭いいわあ、ランティモス」以上の感慨が得られなかった。★5をつけさせる何かが欠けている。面白かったというか、感心した、で私の中では止まってしまうのだ。ランティモスは観察者としては物凄く優れた天才だと思うけど、創造者としては天才に近い秀才というレベルにとどまっている気がする。クールに甘んじていないで、歪であっても、生の吐露が見たいと思う。この人なら、より過激にするってことじゃなしにもっと下げられるパンツがあるだろう、という期待(何という比喩)。
同じ役者が別人を演じ、繋がりがあるようなないような(映画の約束事を挑発するような)胸騒ぎを誘う仕掛けがある。これはデヴィッド・リンチ的なアプローチであり、R.M.Fが腹にぶちまけたケチャップを血糊に見立てるエンディング(明言しないが恐ろし過ぎる類似シーンがある)に至ってリンチ先生への言及だと確信したが、これは正直、リンチ先生のレベルに比較すれば児戯に等しい。リンチ先生のコレには、詳しく言及しないが、単なる技術だけではなく、不確かな迷宮世界での実存にまつわる思想、実はロマンティックな真心があるのだ。そのへんを参照してほしいと思うのである。
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