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[コメント] 毒娘(2024/日)

角地の一戸建ての家(貼紙で売り家と分かる)。その俯瞰気味の固定ショット。左手の道の奥から高校生の男女が歩いてくる。このアバンタイトル、メインのプロットの後日談か、前日談かどちらだろうとずっと思いながら見た。
ゑぎ

 こういう引っかかりを残すことは良いことだろう。瓶に詰められた死んだ昆虫。バルコニーの窓に影。ハサミを持った女の子。

 タイトル開けも、この家のバルコニー側からカーテンを映し込んだ萩乃−佐津川愛美のショット。引っ越し荷物の片付けをしている。洋裁用のトルソー(胴体)が目に付く。娘の萌花−植原星空が、萩乃のことをママさんと呼ぶので、夫の連れ子だろうと了解する。萌花はいつも右手に黒い手袋をしていて不穏。目が大きい容貌もちょっと怖い。この母娘ともに、とてもおっとりした口調の演技が付けられていて、このスローテンポも怖い感じがするけれど、なんかニヤける。家を屋外から引いて撮って、1階の母親・萩乃と、2階の萌花を見せるショットなど、良いショットもある。

 実は萌花がハサミ少女になるのかと思っていたのだが、萩乃と萌花の屋内でのツーショットで、後景(窓外)の奥の方に赤い服を着た少女が出現(再登場)する。この少女−伊礼姫奈は「ちーちゃん」と呼ばれる。その暴力性、傍若無人ぶりはかなりぶっ飛んでいて、萩乃だけでなく夫(萌花の父)−竹財輝之助も、いや警察ですら、ほゞ何も対応できない、というところは現実離れしている。この点は納得性が乏しいかも知れないが、見どころを多く作る。

 ちーちゃんが一貫して強烈に赤色で彩られている、対して萌花は黄色好きだったのに、徐々に赤く染まっていく、という色彩の扱いは象徴的だ。赤色は戦闘色。黄色も注意喚起のイメージと云うべきか。赤とバツ印の執拗な繰り返しは、やり過ぎ、かつアザトイとも思えて来る。あと、霊的なモノを匂わせる描写の挿入は中途半端じゃないか。ちーちゃんの父母の扱いが変なのも(父親も変だが、母親の表情の方が怖い)、ちょっとスピリチュアルなものを感じさせられた。

 しかし、中盤あたりから、ちーちゃんが案外可愛らしく見えて来るのがいいし(喋り方が可愛い)、『新学期操行ゼロ』みたいな、寝室の羽毛布団を切り刻んでダウンを飛散させる場面から、河原のススキの穂が画面いっぱいに舞う場面へ繋げる相似の画面の連打にはセンスを感じさせる。やっぱり河原を舞台にすると、いい画になる。

(評価:★3)

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