[コメント] トラップ(2024/米)
35ミリのフィルム撮影での手腕を期待されたということだろうが、ルックとしてはムックディプロームらしいというよりは、ヤン・デ・ボンみたいと思いながら見た。『ダイ・ハード』とか。
さて本作は、概ね前半のコンサート会場(タナカ・アリーナという会場名!)と、後半の会場を出てからの場面の2部構成と云っていい映画だと思うが、どちらも見せ場たっぷりだけれど、私は後半の特に主人公のクーパー−ジョシュ・ハートネットと娘ライリー−アリエル・ドノヒューの家の場面がいいと思う。
前半はレディ・レイブン−サレカ・ナイト・シャマランのコンサート自体がタイヘン見応えのある造型で瞠目したが、いかんせん、ご都合主義が過ぎるスクリプトのイヤらしい部分が多々あって減点せざるを得ない。例えばお喋りなグッズ販売員や、レディ・レイブンの叔父さんの役割りなんかを指しているのだが、この叔父さんを自身が演じるって、突っ込まれるのを期待した炎上商法みたいじゃないか。ただ、そんな中で、クーパーの行動を的確にとらえる続ける演出や、スター歌手に心酔している少女たちの見せ方はとても良く、中でもライリーの音楽に合わせて唄ったり、口パクする際の表情の可愛らしさは特筆すべきだと思う。
後半の良さについては、私は第一に人物一人の正面に寄ったショットの切り返しを連発する演出を上げたい。多分、肩なめショットの切り返しは一回もなかったと思う。これは、前半のコンサート会場でも、娘ライリーの同級生ジョディの母親がクーパーに話しかけるシーンなんかで使われているが(いきなり、カメラ目線に近い女性の顔のショットが繋がれる)、クーパーの家の中の彼とレディ・レイブンとの会話シーン、あるいは、終盤のクーパーとその妻レイチェル−アリソン・ピルとの会話シーンが顕著だろう。これにより、非常に強いシーンを造型しているということ。この演出は前作『ノック終末の訪問者』でも感じた演出で、さらに発展していると思った。
あと、FBIの女性プロファイラーを演じるのはヘイリー・ミルズだ。これは嬉しい配役だ。つい最近(今夏)、彼女の二十歳の頃の主演作『青春がいっぱい』(アイダ・ルピノ監督作)をスクリーンで見て感激したというワタクシ事があったからだ。どうせなら、もっと科白があれば、というのはないものねだりとは思うが、今後も映画に出て欲しい。
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