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[コメント] オアシス(2024/日)

街を歩く清水尋也の後ろ姿。ステディカムかジンバルで追うショット。途中で前に回ったり、また背後に戻ったりしながら見せる長回し。これに似た画面はダブル主演の高杉真宙にもあり、こういう演出はとても決まっている。
ゑぎ

 しかし、冒頭すぐに、清水と、敵対する半グレのリーダー・木村−松浦慎一郎が対峙するシーンで見せるショット/リバースショット(切り返し)には、違和感を覚える。松浦が少し高いところ(階段の途中?)にいて、歩道から見上げる清水との繋ぎなのだが、繋がっていないように見えたのだ。「繋ぎが繋がっていない」って変な日本語だが、人物の視線とアングルに違和感がある、不調和を感じるということだ。

 他にも、清水と紅花−伊藤万理華が最初に会話をする昼間のコインランドリーのシーン終結部、伊藤がいったん外に出て、追いかけた清水と会話する場面の照明も出鱈目じゃないか。あるべき光(レフ板でいいと思う)が無いように感じられる。序盤にこういう部分が続いて、私はかなりフラストレーションがたまった。撮影の池田直矢と照明の舘野秀樹は『ソワレ』や『水は海に向かって流れる』のコンビなのに、どうしてこんなことになってしまうのだろう。何か理由があるのだろう。

 また、フラッシュバックが多い点もハードボイルドに水を差す。最初は高杉の回想で入る、フェンスのある草ぼうぼうの道を行く中学生ぐらいの男子2人と女子1人のショット。あるいは、伊藤の母親の修羅場をこの中学生3人が見る場面。こういうのを画面化しない方が(少ない回想セリフだけにして、観客に想像させる方が)、ずっとカッコいい映画になると思うのだが。さらに中学時代の隠れ家、秘密基地みたいな廃屋に清水、高杉、伊藤の3人が潜伏する場面の能天気さにはイライラしてしまった(このシーケンスの照明にも違和感がある)。例えば、ヒロインとしての伊藤をもっと魅力的に演出すべきだろう。そして、こゝがオアシスか。これも安易なタイトルだ(同名タイトルの有名作が既にあるのに、という観点でもどうかと)。

 と、粗探しのようなことばかり書いたのだが、キャスティングは魅力的で、メインの3人のファンには充分楽しめる映画にはなっているだろう。脇役も充実している。清水が所属する組の組長−小木茂光、その息子−青柳翔、清水の兄貴分−窪塚俊介、あと上述の半グレリーダーの松浦の4人には、よくディレクションされた見せ場がある。こゝに半グレのサブリーダーのような杏花に、もっと強烈な演出があったら良かったのに。彼女に武闘派として最強に見える場面があれば、映画全体の満足度が上がっただろう。あと、三宅唱山戸結希の助監だった人のデビュー作ということでも期待していたのだが、こういう類いの期待は禁物だと再認識する。例えば三宅唱とは、全く異なる志向を持つ監督だと思う。

(評価:★3)

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