[コメント] ザ・バイクライダーズ(2023/米)
カマーが女友達に呼び出され、ライダーたちの溜まり場(バー)に初めて入る。友達のテーブルの後ろにはハーディがいて、バトラーはビリヤード台のところ。用事が済み帰りかけたカマーは、バトラーを見てまた席に着く。バトラーが来て見つめ合う2人の無言の切り返し。表に出たカマーのミタメショットで、バトラーがバイクにまたがり、スターターをキックする。エンジン始動音の響き(爆音)に震える。
実は主演の3人もそうだが、気になっている役者が他にも何人か出ていて、彼らの新作を見たいというのが見る一番の動機でした。脇役で一番のビッグネーム、ジプコ役のマイケル・シャノンは置いておくとして、まずはマンゴールドの『ローガン』や『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』でいい悪役をやったボイド・ホルブルック(本作では修理屋カル)。あとインタビュアー役のマイク・ファイストは『ウエスト・サイド・ストーリー』のリフだ。他にも『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でチャールズ・マンソンを演じたデイモン・ヘリマンがハーディの右腕ブルーシー役。『ブルックリン』や『ブルー・バイユー』に出ていたエモリー・コーエンがゴキブリという渾名の役。
そして、トビー・ウォレスだ。ウォレスは『ベイビーティース』でヴェネチアの新人賞を獲った人。近作『ロイヤルホテル』の彼も抜群の存在感だった。本作では、タイヤホイールを盗む場面でハーディらに遭遇する若者、といったかたちで唐突に登場し、曰くありげに、何度か彼のシーンが挿入され、終盤ではハーディにチャレンジ(決斗)を申し入れる、という良い役なのだ。きっと今後さらに活躍することでしょう。
さて、ジェフ・ニコルズは前作『ラビング』でも『理由なき反抗』のチキンレースみたいな導入部を見せてくれていたのだから、本作の題材は彼の好きな分野なのだろう。しかし、画面造型や演出の基調はこゝでも簡潔かつ静謐なものだ。暴力シーンもあるにはあるが、どちらかと云えば牧歌的であったり温和しい場面に良いところがあるように思う。例えば、終盤、ハーディがカマーの家を訪れ、ベニー(バトラー)はまだ戻らないか確認する場面などがそれにあたるだろう。夕景の中での切り返し。この終盤はプロットもシリアスなものになり、ハーディとカマーの顔作りも、心理的に過ぎる感はあるけれど。ただし、ラストシーンにおける人物の顔は曖昧な表情で、これは良いディレクションと思う。
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