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[コメント] チャチャ(2024/日)

近作の酒井麻衣を3本見たが、他の2本『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』『恋を知らない僕たちは』に比べると、同様に美しい色遣いながら、画面はかなり落着いた触感がある。しかし、本作が一番ずっとニヤけながら見ることのできる作品だ。
ゑぎ

 開巻はノートパソコンのディスプレイ、黒い画面を少し引く。7月7日月曜日と出る。薄緑の可愛いキーボード。最初の心の声モノローグは、藤間爽子で場所はデザイン事務所のオフィス。藤間はタイトルロール−伊藤万理華の同僚だ。ちなみに、モノローグは、この後、伊藤、中川大志塩野瑛久と引き継がれ、最後は落合モトキで締められる。他にも、いくつか心の声みたいな科白が入る。花の声とか、電柱とか、赤いポストとか、原菜乃華とか。

 また、目に留まって言及したくなる表層的な道具立てが沢山ある。まずは、これは液体の映画だと思いながら見た。川やシャワー。アップルサイダー、ワイン、炭酸水に柑橘類を絞ったクリームソーダ?といった飲み物。ちょっと粘性はあるが、絵の具、血液、水晶体。あるいは、食べ物も沢山。伊藤が食べているのはカレーパン?藤間のお弁当。社長−藤井隆の昼食はイカのにぎり、焼き鳥弁当。あと、中川が作る、ふわふわのスフレオムレツ(モンサンミッシェルのオムレツ)のイメージは決定的。伊藤が藤間に送った紫色の誕生日ケーキ。他にも、これは喫煙者の映画だし、単品だと、花(タンポポの花)、押し花なんかもあるだろう。

 そして、本作もまた、キスの映画だと思う。私は、伊藤と中川がキスするかどうかをずっと心に懸けながら見た。2人が口唇を合わせるショットがあるかどうか。中盤でキスを迫った伊藤を、中川がいなしてハグをする場面があるからだが、中川の性的志向が中盤以降の焦点でもあるからだ。キスとは異なるが、口唇と液体を映したショットは十全である、という点は書いておきたい。

 尚、中盤以降、ユルユルのファンタジー(この言葉は、非現実的な設定・展開、というぐらいの意味で使っています)になってしまって、こういうのを嫌う観客もいるだろう。具体的には塩野瑛久の扱いや終盤の山中の場面を指しているが、塩野登場を導くプロットをギアシフトさせる見せ方には驚きがある。伊藤が、好きな人の血液を舐めたい、と云った後、グラスの氷から空の雲に繋がれて、時空がシフトする処理、再度7月7日月曜日に時間軸が戻ってしまう見せ方だ。こゝから入るナレーションも、ラスト近くまで何だったんだろうと、かなり気になりながら見る。

(評価:★3)

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