[コメント] リュミエール!リュミエール!(2024/仏)
随所で紹介される乗り物にカメラを据えて移動しながら被写体を撮る「パノラマ撮影」と称された移動撮影の流麗さが印象的です。そしてフランシス・フォード・コッポラによる『工場の出口』のリメイクが実に楽しいです。
そんななかでも私には興味深かったのは、ヨーロッパから世界各地へ派遣されたカメラマンによる作品が系統立てて紹介されるパートでした。東へ向かった撮影隊は当時フランスの統治下にあったインドシナでフランス風に統率された軍隊をカメラに納めて独立国家だった日本へと向かう。一方、西へ向かった撮影隊の作品としてアメリカのボストンの街頭を撮った映像が紹介される。この日本(おそらく東京)とボストンの街頭風景が実に対照的なのだ。東京の街は(演出があったのだろうか)和服姿で右往左往と頻繁に行き交う人(歩行者)たちで溢れ返っている。逆にボストンの街に歩行者はほとんどいない。その代わり馬車がほとんど無秩序にひっきりなしに行き交い衝突しそうなくらいだ。そして南に向かった撮影隊が撮ったモロッコの街頭風景は、大量の歩行者が行き交い(もちろん人種も服装は違えど)日本(東京)の街頭にそくりだ。同じ1800年代末期に栄えた都市の、これほどの文化習俗や都市の発達形成の違いが時空を超えて125年後に目の当たりに確認できるのだ。改めて「映像」の持つ力を認識させられた。
他に日本で撮影された映像として初期の牧野省三作品のような「日本の俳優:剣による戦い」、ふんどし姿の裸の農夫が立ち漕ぎで回す水車を撮った「田に水を送る車」、そしてナレーションでは小津風と称された夫婦と子供二人、お手伝いさんが縁側で食事をする「家族の食事」などが紹介される。
私はこの作品を「映画伝来 シネマトグラフと〈明治の日本〉」(岩波書店)という書籍に掲載された画像で見知ってたのですが、今回初めて動く映像として見ることができました。いづれもコンスタン・ジレルという撮影技師による作品で、なかでも著者の光田由里、木下直之(他共著)の記述によると「家族の食事」の被写体は、日本初のシネマトグラフの輸入者でコンスタン・ジレルを招いた稲畑勝太郎の一家だそうです。左の端に映っている若いお手伝いさんの画像では分からなかったニコニコと屈託のない明るい笑顔が印象的でした。
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