[コメント] 満ち足りた家族(2024/韓国)
冒頭は、アオリ運転の末の喧嘩で発生した殺人事件の場面。被害者は車で轢き殺され、その娘は重体に。続いて、イノシシ猟のシーンが挿入される。見終わった今考えると、これいるか?というシーンだけれど、観客の感情操作には一定の効果のあるシーン構成だと思う。
本作はタイトルのイメージとは裏腹に、殺される人があと2人(多分)出て来る。人以外の生き物だと、イノシシの他に、てんとう虫や鹿も殺される。タイトルに関わる主要人物は7人、2家族。一組は冒頭事件の訴訟における弁護人・ジェワン−ソル・ギョングの家族。その若い妻(後妻)がジス−クローディア・キムで、ジェワンの前妻との子で高校生の娘・ヘユンがおり、ジスの産んだ小さな赤ちゃんもいる。もう一組は、ジェワンの弟で小児科医のジェギュ−チャン・ドンゴンの家族。妻・ヨンギョン−キム・ヒエと高校生の息子シホ、それと、兄ジェワンと弟ジェギュの老母は、こちら(弟の家)で介護をしている。
本作は兄夫婦と弟夫婦の4人での会食(ディナー)シーンが、序盤、中盤、終盤と3回出て来る映画だ。矢張り、これら場面の変化の付け方が本作の一番のポイントと云っていいだろう。序盤の会食(1回目)は高級レストランの一室で、兄が老母を介護施設へ入れるのはどうかと提案するもの。2回目は兄の住居(高級マンション)のリビングルーム、3回目は1回目と同じレストランの同じ部屋で、いずれも子供たち(いとこたち)のトラブルについての対処を相談する。特に2回目と3回目の兄弟の心境変化と完全に立場を入れ替える展開(及び子供たちの実態の暴露)には、震慄すると同時に、実に面白い作劇と思う。また、兄弟に対して妻2人は、ほゞ一貫していると云ってよく、弟の妻・ヨンギョンが「兄弟で私を振り回さないで」みたいな科白を云うのは笑ってしまった。
さて、撮影・編集はかっちりした切り返しが主体だが、パンチの効いた俯瞰ショット(例えば横たわったイノシシや鹿の俯瞰)や、最初に高級レストランへ4人が入って行く際のクレーン移動(1階から、2階の部屋へ上昇移動して見せる)みたいなダイナミックな移動ショットも適時織り込こんで、よく見せている。そんな中で、3回目の会食シーンでは、ずっとハンディカメラのブレ画面が使われていて、これも常套かも知れないが、効果的な演出だと思った。尚、ラストの展開は予想できるものだが、予想できるのも決して悪くない。ただし、驚愕した人物のカット挿入が冗長で、これは不要と感じた。唐突な運動の後、何も映さずに暗転し、家族7人の記念撮影場面の挿入で良かったと思う。
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