[コメント] ファーストキス 1ST KISS(2025/日)
本作でも例えば、松たか子と松村北斗が行列に並んで入った、かき氷屋の店内での会話シーンや、続くホテルの休憩所のようなソファのある場所での会話シーンなんて、その斜光の扱いは、まさしく秋山恵二郎の刻印だろう。松村北斗が出ていることもあって、もう『夜明けのすべて』を彷彿とさせずにはおかない見応えのある光の演出だ。
というワケで、面白く感じる細部も沢山ある映画だとは思いますが、実を云うと、違和感のある細部も山ほどある映画でした。無粋とも思いますが、書き留めておきます。
≪以下は、できる限りネタバレぎりぎりの線を狙って書きますが、ネタバレ感度の高い人にはネタバレ注意ということで!≫
まず、冒頭近くの、餃子が焦げる見せ方。これって観客は多分100%「焦がすよな」って予想がつく場面だと思うのだけれど、だからこそ、もっと面白い見せ方(あるは段取り)はできなかったのだろうか。素直過ぎる演出で、ガクッと来た。続いて三宅坂ジャンクションでのタイムリープの表現。これが簡潔過ぎるってのは、ま「おまじない」みたいなものだから、これでいいのかとも思うし、トンネルの先に子供2人がいてポラロイド写真を撮るというのも面白いと思ったが、最初に出てきた鹿のCGショットがショボくてガックリ。実はこの序盤のガックリ2連打で、既に本作全体のクオリティに偏見を持ってしまった。
あと、誰が見ても酷い!と思うに違いないと(私には)感じられる部分として決定的なのは、吉岡里帆の扱いだ!15年前のホテルの場面でも、単なるお人形さんとして扱われていると思うのだが、何と云っても、劇場に松たか子を訪ねて来た場面の吉岡のシーンの気持ち悪さ。これほど吉岡を酷く扱った映画は初めて見た。本当にプロットのための奴隷のような役だ。その酷さは『正体』以上じゃないか。
そして、こゝから書くことは、人によって感じ方が異なるだろうことは承知の上で書くのだが、まず、最初に照明を褒めた、かき氷の場面の後のホテルのソファでの会話シーンだ。ある意味こゝがハイライトと云っていいと思うが、しかし、こゝからの松村北斗のキャラのシフトには、私は唖然としてしまった。なぜか、唐突に自信が漲り、カッコつけ始めたように私には映ったのだ。この後の、お祭りの屋台の中を2人で歩く演出や、教会のシーンの松村の押しの強さも、こんなヤツだった?と違和感を覚える。
さらに、もう映画的な話ではなくなってしまうが(何が描かれているかの好悪の話になってしまうが)、私には、ラストまでずっと松村は酷いヤツだと思える。もっと穏当な解決策を見い出せるじゃないか。天邪鬼過ぎないか。武士道か。あるいは、どちらか一方だけが努めて生活すれば、仲が良いまゝ過ごせる、という描き方は、この2人の場合は、という条件付きとは云え、短絡的過ぎて胡散臭くないか。そういうことができる人物たちなら、もともと破綻しなかったのではないか、なんて思いもよぎる。
尚、タイプリープ周りの細かなご都合主義(云い換えれば違和感)については、作劇の約束事ととして、私は見逃すことができる。例えば、3年待ちの餃子が、代引きじゃなくなっている、注文者が変わってサプライズになった、というのは、考えてみると不思議というか、ヒドイご都合主義だが、これはこれでいいと思う。
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