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[コメント] ザ・ルーム・ネクスト・ドア(2024/スペイン)

NYの通りを撮ったスチル写真(かと思う)。モノクロ写真。これがカラーに変わり、通行人が動き出す。本屋。ジュリアン・ムーア−イングリッドは作家でサイン会をしている。その真俯瞰ショット。こゝで既に、あゝアルモドバルの色遣いだと思う。
ゑぎ

 サイン会に、友人が来て、マーサが入院しているという話をする。ティルダ・スウィントン−マーサの登場は唐突な正面アップ。次に病室へ入って来るムーアを繋ぐ。この繋ぎにも小さな驚きがある。子宮頸がんでステージ3。会話の中心はスウィントンの娘の話に移り、スウィントンが、娘は産院で取り違えられたのではないか、と云うのもアルモドバルらしい。また、娘の父親については、フラッシュバックが何度もある。付き合い始めた頃のボーリング場。ベトナムからの帰還後の再会。妊娠を告げるダイナーの場面。そして、彼の妻からの伝聞の画面化。平原の一軒家の火事。なのに、娘についてはフラッシュバックで見せないというのは違和感を覚えるが、これは作劇の大事な点だ。

 さて、アルモドバルらしい装置の意匠や色遣いで云うと、一番インパクトを感じたのが、スウィントンの自宅の壁に描かれている大きなコップに挿し入れられた花の絵だ。次は、矢張り、一か月間だけ借りたという森の家の赤いドアか。このドアがタイトルの(邦題でも定冠詞が付されている部屋の)ドアを表している。ちなみに、赤色は衣装を含めて画面のあちらこちらに散りばめられている、やっぱりアルモドバルのサインだ。例えば、赤い自動車、赤いソファ。真っ赤なルージュ。そして最終盤で登場するスウィントンは、赤いセーターを着ている。この登場にはゾクゾクした。あるいは、ピンク色の雪。

 本作でもいくつかの過去の映画の引用がある。ムーアとスウィントンが2人で『イタリア旅行』の上映会場にいる場面。これは映画を見るシーンが省略されるので、もしかしたらこの後、2人は映画を見なかったかも知れない。あと、円盤だけで『忘れじの面影』。そして、2人でDVDを見るかたちで断片が挿入される映画は『キートンのセブン・チャンス』と『ザ・デッド』の2作だ。実は、このジョン・ヒューストンの遺作のエンディング(ジョン・ヒューストンの最後の最後)は、映画史上最高のラストの一つかも知れないと私は思っているぐらいなので、これを引用してくれたのには感激した。それに、何よりも『ザ・デッド』のラストカットは、このショットで終わるしかない、というものなのだが、本作のエンディングもこのショットで終わるしかないショットで暗転する。

(評価:★4)

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