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[コメント] ベルサイユのばら(2024/日)

確かに絵は美麗だ。しかしミュージカルという趣向は徹底的に間違いだ。抽象的なイメージの羅列、セリフを載せたがために聞き取り不能なメッセージ。どれをとっても作品を損なっているとしか見えない。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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原作は大河ドラマ的な構造で成り立っているのだから、もちろん様々なエピソード全てを拾っていたら2時間で終わるものではないだろう。だからといって印象的なシーンさえその中にぶち込んでしまうとはどうしたわけか。娼婦上がりの貴族夫人に、それでも挨拶をせねばならないアントワネットの屈辱、という俺でも知っている逸話があるが、本来のストーリーからはわき筋であって、語るべくもないことだ。しかしそれをミュージカルシーンに突如ぶち込む。原作に触れず、突然この挿話を見た観客はいったい理解できたのだろうか。

だからといってイメージシーンも酷いのだ。主役4人がワイングラスを掲げて月に向き直るとか、こんなもの入れてるならドラマを掘り下げるべきだろうに、と思わされる。曲もブルボン王朝時代には馴染むわけもない爽やかポップス。これでは助からない。

そして、オスカルとアンドレが「完全な」主役カップルならば、なんで冒頭で印象を残したフェルゼンやアントワネットの末路をナレーションで誤魔化すのか。原作もそうだったのだというならおしまいだが、仮にも4人の主人公で始まった話である以上尻切れトンボの印象は否めない。確かにオスカルにのみこだわるしかないのは判る。しかし、無垢な少女アントワネットが平民を呪う貴族社会の体現者になるためには印象的なエピソードはあっていいし、権力の座にのぼりつめて暴政を敷き、領民に殺されるフェルゼンにも描き方はあるだろう。それゆえに、「気高く咲く4輪の薔薇」なんて言われても実感が沸かないのだ。令和の子は「ただ不倫ごっこしてただけじゃねえか」なんて評するんじゃありませんかね。

(評価:★3)

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