[コメント] ウィキッド ふたりの魔女(2024/米)
まず、邦題にも「パート1」、あるいはそれが分かる言葉を付けるべきだろう。本作単体では、途中感満載で終わる、ということを事前に観客に示しておくべきだ。知らなかったお前がアホだと云われるかもしれないが、努めて事前に情報を仕入れないで見る観客の多くは、騙されたような気になるのではないだろうか。それでも本作は、充分映画館で見る価値のあるビジュアルを持っているし、集客できる力のある映画だと思う。
ジュディ・ガーランド大好き!の私でも、『オズの魔法使』を支えているのはドロシーでもオズでもなく、決定的にマーガレット・ハミルトン演じる「西の魔女」だと思ってきた。公開当時から現在に至る迄、アメリカの子供達の悪夢の源泉が『オズの魔法使』の「西の魔女」だと何かの雑誌で読んだことがあるけれど、実際、私の3人の子供達も皆、この「西の魔女」を怖がって仕方がなかった。私はと云えば、他の作品でチョイ役のハミルトンを見つけることが現在でも古い映画を見る楽しみの一つだ。
本作『ウィキッド』は、西の魔女が死んだ!という場面から始まる。翼の付いた猿たちが飛び立って行く場面。安っぽいCGでワンカットに見せる長回しショット。しかし、冒頭すぐに虹を見せるのと、マンチキンランドへの道で、ドロシーたちの後ろ姿が一瞬映るというサービスはいい。町の人々が喜ぶ。そこに良い北の魔女グリンダ−アリアナ・グランデが来る。彼女も基本、西の魔女が死んで良かったという態度だが、ちょっと屈託も見える。町の少女が「悪い魔女と友だちだったの?」と聞き、グリンダがかつての西の魔女−エルファバについて回想する、という導入部だ。
さて、私はまずは美術装置に注目して見たのだが、マンチキンランドもシズ大学周りも海中のダンスクラブ「スターダスト」もイマイチかなぁと思いながら見ていて(大学内の、回転する仕掛けのある図書館はちょっといい)、エメラルドシティへ向かう列車の場面になって、ようやく目を瞠る思いがした。この列車は面白い。そしてエメラルドシティの造型、こゝでのプロダクションナンバー「ワン・ショート・デイ」のスケールの大きさもなかなかのもので、ようやく満足感を得られたと思った。
ただし、ミュージカルシーンで一番気に入ったのは「ポピュラー」の場面だ。スターダストでガリンダ−グランデとエルファバ−『ハリエット』のシンシア・エリヴォが唐突にサイレントのダンスを一緒に踊った後、部屋に戻ってグランデの歌唱となる場面。それまで、独善的だった(心根は良いことも分かるレベルだったが)ガリンダ−グランデが、私には、ちょっとずつ可愛らしく見えて来た。ウザったかった髪をかきあげる仕草まで愛らしいと感じてしまう良い演出だと思う。結局、このパート1では、良かれ悪しかれ、エリヴォよりもグランデが目立つ役回りだったように感じる。原作もそのミュージカル化舞台についても全く未読未見のワタクシ的な期待だが、次作パート2では、マーガレット・ハミルトンに肉薄するぐらいの邪悪な西の魔女が垣間見られたらいいなと思う。
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