[コメント] 片思い世界(2025/日)
部屋の中には、ピアノを演奏する少年と、何か作文を書く少女。書きあがってふと見ると、ピアノを演奏していた少年が消えている。テンマ君!捜す少女。このプロローグは劇中の現在時点からいうと12年前の出来事。
渋谷。宮下公園辺り(明治通り)の歩道を清原果耶が歩く。キャットストリートの方へ入って行くので、家は原宿辺りという設定か。庭のある古い家だ。出迎える杉咲花と広瀬すず。2人はとても慌てている。清原は20歳の誕生日で、サプライズの準備中だったのだ。屋内シーンはとても綺麗。それは全編に亘って云えることだ。この家屋内だけでなく、中盤の素粒子物理学研究所の中のシーンなんかも良い画面と思う。本作もまた秋山恵二郎の照明だ。
広瀬はIT系の会社だろうか、オフィスでパソコンに向かい仕事をしている。杉咲は大学で講義を聞く。スーパーカミオカンデ。素粒子。清原は水族館で働く。杉咲がキャンパスで人とぶつかりそうになって、風圧に押されたみたいに倒れる。これ面白いと思ったが、以降も繰り返す。朝、京王バスに乗る広瀬と清原。こゝで横浜流星と何度も会い、広瀬が横浜を見つめる。清原は広瀬の片思いととらえる。横浜は誰もが予想する通り、冒頭のピアノを弾いていた少年−テンマ君だ。
横浜流星のデートを清原と広瀬が尾行する。横浜の相手は小野花梨。ラフマニノフのピアノ曲の演奏会だ。清原の大胆な振る舞いとそれを止める広瀬。こゝ止めなくてもいいのにと思う(現実レベルでも映画的にも)。広瀬と横浜のからみでは、広瀬が彼の言葉を背後で聞きながら、首を横に振る(つまり否定する)動作の反復が効く。特に、バスの中で横浜と小野の会話を後ろで聞きながらの広瀬のリアクションには心揺さぶられた。ちなみに、杉咲が、何のために生まれてきたんだろ、みたいな科白を云う際にも、広瀬は同じように首を横に振っている。
杉咲による素粒子に関する理屈の解説シーンが始まった際には、これが日本映画の悪い癖だよなぁと思った(つまり、こんなことしなきゃいいのにと思った)が、これが反故にされるのは予想外だったし、逆に胸がすく結果になった。杉咲からみだと、三日月型のクッキーの扱いにも不意を突かれた。この辺りの作劇については私の好みだ。
全体的に云って、近作の坂元裕二脚本作品(劇場公開作)『花束みたいな恋をした』『怪物』『ファーストキス』といった作品と比べても、本作が一番好きだ(あえて比較したならば)。あと、ラジオ放送の声(ラジオパーソナリティ)は誰だろう、聞いたことのある声、とずっと思いながら見たが、エンドロールまで分からなかった。誰かは伏せておきます。
#エンドロール中、撮影班の記載の中に四宮秀俊の名前もあった。
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