[コメント] プロフェッショナル(2024/米)
結果、スターンの撮影照明には大いに満足したけれど、ロレンツの仕事ぶり(と思われる部分)に関しては、勿論、良い点も多々あるが、前作と比べても荒っぽいところが散見されると感じた。
先に気になった点から。まず、アバンタイトルのベルファストにおける爆弾テロの描写。通り側からのパブの正面ショットなんかはとてもいいと思ったが、幼い子供と母親が巻き込まれるかどうか、というスリル創出のカット割りに関しては、イマイチ空間把握が難しい繋ぎになっていると思った。例えば自動車のサイドミラーに映った母子のショット挿入で混乱させられる。こうなると、以降も、全般的にロケーションの距離と空間の描写が気になってしまった。主人公−リーアム・ニーソンの自宅と、行きつけのパブのある町、仕事の依頼者コルム・ミーニイの家、芦毛の馬と共に登場する少女モヤの住むトレーラー、IRAメンバーのデラン−ケリー・コンドンたちの隠れ家(近くにフットボール場がある?)、あるいは、ニーソンの若い同僚(?)ケヴィン−ジャック・グリーソンが一人で住む家、劇中最初のターゲット(殺される男)が唄うクラブのある町などなど。
また、全体に多くの登場人物をよくさばいて、それぞれに見せ場を作った上手い演出だと思いながら見たけれど、人物描写の中でも少し引っかかる点がある。例えば、ニーソンが、デランの弟カーティス−デズモンド・イーストウッドに行う仕打ちは、勿論やり過ぎだろうが、それは本作メインプロットの肝なので、映画として仕方なかろうと容認する。ただし、カーティスの悪行をもっと強調する場面(少女モヤがもっと酷いことをされていたとか)があったなら、かなり違ったと思える。あるいは、デラン−コンドンの複雑な造型も本作の美点と思いながらも、その唐突な凶暴性の発現は、分裂気味な描写にも感じられるし、若いケヴィンのキャラ造型というか主人公との関係変化の演出も、もう一押し足りないように思った。
では、良い点について。最初に書いた通り、撮影の良さは随所に感じられる。まずはそれこそイーストウッドを彷彿とさせる美しい空撮ショットの数々。アイルランドらしい地勢(丘陵地とその海岸線)の美しさ。いやそれ以上に、本作でもスターンらしく、屋内シーンの光の回り具合が実にきめ細かな良いものなのだ。あとは細部の演出(及びスクリプトかと思われる部分)の話になるが、冒頭すぐに、海が見える丘でニーソンと友人のキアラン・ハインズが射撃の腕比べのため、缶を置くシーンがあるということ。これは『マークスマン』でも同様の場面があったし、勿論イーストウッド作品を想起させるサービスのようなものと思う。また、ハインズがライフルを構えたショットから、彼が自動車の中で金をニーソンに渡すショットに繋ぐという省略の演出。これと似た形で、ターゲットが自動車のトランクに押し込められる場面を省略した構成がこのあと2回出て来るといった部分もいい。トランクから引き出された後、最初のターゲットが、全然抵抗しないのは少し違和感があったが、2人目はちゃんと暴れる、というのも上手い。その他、隣人リタ−ニーヴ・キューザック、モヤのママ−セーラ・グリーンをはじめとする町の住民たちや、デラン以外のIRAメンバーも含めて、多くの人物をしっかり描く手腕は、ほむべきものだと思う。最後に、少女モヤがめっちゃ可愛い。
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