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[コメント] ゴーストキラー(2024/日=米)

転がった赤い薬莢。黒い液体が流れて来る。薬莢の行方、数珠つなぎ。このオープニングはカッコいい。薬莢を松岡−高石あかりが拾ったことで、プロットがドライブする。
ゑぎ

 本作の高石も、私には『ベイビーわるきゅーれ』の「ちさと」に(同じキャラに)見えた。これはもう少し違ったキャラ造型(例えばもっと清楚であるとか、気弱であるとか)で来るかと予想していたので逆に驚いた。特に、身にふりかかる出来事に対するリアクションの取り方が気丈過ぎて、私にはもう幽霊譚以上にファンタジーに思えた。こゝで云うファンタジーとは「映画らしさ」とほゞ同義だ(なので良い意味で云っている)。あるいは、劇中での高石の成長はほとんど描かれていず、元から正義感の強い、気持ちの強い人だったのだと感じられた。

 続いて、松岡−高石に取り憑く工藤を演じる三元雅芸について。私は『ベイビーわるきゅーれ』シリーズの物足りなさは、この人が一作目で退場してしまったことにもあると感じているぐらいだが(昔のプログラムピクチャーのように別人で登場させればいいのにと思っているぐらい)、いやあ、本作でまた違った魅力が発掘されたように感じた。ちょっと松田優作の真似をする竹中直人みたいではあるが、とてもいいんじゃないでしょうか。アクション映画以外でも活躍できることを証明したと思う(そんなに沢山見ているワケではないので、そんなこと前から分かっているよ、と云われるのかもしれないが)。

 さて、例によって少し気になった点も書いておきましょう。一つ目は、工藤が呼んだ殺し屋カゲハラ−黒羽麻璃央の造型で、演者としては決して悪くないと思うが、登場前に「笑わない男」とかなんとかの紹介があり、ハードルを上げ過ぎたんじゃないか。もっと怖いサイコパスに近いキャラかと思ってしまった。さらに、黒羽の格闘シーンは明らかに弱い。そのデンで云うと、敵のボスの井上想良ももっと怖くて良かったんじゃないと思う。代わりに、クライマックス、一対一の対決シーンを務める得体の知れない殺し屋(カゲハラ−黒羽も初めて見たと云う)−川本直弘は流石に怖くて良かった。しかし、クライマックスの三元との擬闘は、長すぎるか。また、三元が高石に変わった際のダメージ具合がとても心配になる良い趣向なのに、高石の損傷具合がイマイチだったのはちょっと拍子抜けした。もっと痛めつけられた感があった方が良かったんじゃないだろうか。

 あと、随所で「まひろ」の不在が寂しい(「まひろ」が恋しくなる)という感覚も味わったが、序盤のマホ−東野絢香がやっぱり良い働きをし、「まひろ」の喪失感を埋めるとともにメイン・プロットのセットアップに大きく貢献をするという点も特筆しておきたい。なんなら、中盤も東野が絡む展開を期待してしまったが、それは無いものねだりと思う。

(評価:★3)

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