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[コメント] ノスフェラトゥ(2024/米)

傑作。総てのショット、とまでは云えなくても、少なくも総てのシーンで瞠目する。メッチャ面白い。それは掛け値なしで、オープニング(アバンタイトル)からラストシーン(ラストショット)までだ。
ゑぎ

 古めかしいユニバーサルのロゴ。溶明する前に、オルゴールのような劇伴と女性の呻き声。唐突に繋がれた寝間着姿のリリー=ローズ・デップの正面ショットがとても綺麗と思う。全編に亘って、デップは、横顔より正面ショットが美しいと思いながら見た。この場面の窓と膨らむカーテンと影の演出。床から少し浮いているデップ。全編に亘って、窓と影の映画と云うべきだろう。装置の見どころは、ドアや階段や鏡もあるけれど、窓と影が圧倒的だ。ラストショット直前の、ウィレム・デフォーと窓と鏡のショットも強烈に記憶に残るが。

 また、全編に亘る正面ショットの切り返しの反復も指摘できる。しかも窓を横にした配置が多い。なので、それぞれ−例えばデップと夫のニコラス・ホルト、デップとオルロック−ビル・スカルスガルド−の顔の窓側だけに光が差した画になる。これらの画面も見ることの快さを感じさせてくれる。

 というワケで、良い細部をあげていくとキリがないと思われるが、どうしても書いておきたい事柄のみ、さらに列記します。まず、序盤すぐにホルトが出勤するのをカメラが追う部分−朝の街中を見せる場面で、画面の奥の奥まで(港に停泊している帆船などまで)作り込まれている仕事ぶり(CGでしょうけど)。ホルトの勤務先−不動産会社の社長ノック−サイモン・マクバーニーのキャラも登場時点で既に意味深だったが、中盤以降もこゝまで活躍するとは予想していなかった。その後、ホルトが旅(出張)に出る際の、風車のある風景を乗馬が駈けるショット。ジプシーたちが取り囲む宿屋の場面の、蝋燭の炎だけの照明。こゝはサイレント映画のオレンジ色で着色した画面みたいだ。

そして、オルロックの城へ続く道のシーン。粉雪が舞う中、画面奥から馬車が出現し、手前に向かって来るショットの造型。城の中の各シーンも非常に高い緊張感で一瞬もテンションは弛緩しない。この城の中のシーケンス含めて、全体に、夢から覚めたというか、吃驚して目が覚めるというシーンが何度も挿入されるが、しかしそれは夢(夢オチ)ではなく、うつつ(実際に起こった事柄)だったというカタチで展開させていて、この一貫性も良い点だと思う。あと、ホルトの友人の実業家(造船会社の社長)ハーディング−アーロン・テイラー=ジョンソンの娘2人がメチャ可愛く、唐突にこの子らのショットを挿入する感覚もいい。

 尚、デップはビリング3番目だが、タイトルロールのスカルスガルド以上に、彼女が主人公と云うべき映画だろう。デップはとても良い女優になったと思うしますます今後の活躍が楽しみだ。スカルスガルドが、メイクで本人の微かな面影もないというのは、これはちょっと可哀想に思う。

#備忘。猫の名前、グレタ。

(評価:★4)

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