[コメント] クィア/QUEER(2024/伊=米)
序盤すぐ、建築物の後景にある煙を上げる煙突なんかを見た際は、CGの合成だと思ったが、街中のショットはオープンセットだろうか(行きつけのバーレストラン「シップ・アホイ」周辺など)。これが、ハイウェイのような道路のロングショットでは、高速で行き交う自動車が完全にミニチュアと分かり、唖然とする。さらに、後半には旅客機の離陸ショットがあり、この飛行機もよく出来たミニチュアによる造型だ。
あるいは、本作の前半はメキシコ、後半のほとんどは南米が舞台となるけれど、テレパシー能力を獲得する目的で南米(エクアドル)のジャングルで「ヤヘ」をやった後の幻覚シーン。いやそれ以上に、「ヤヘ」の研究者・コッター博士−レスリー・マンヴィル登場場面の黄色い毒蛇を含めた演出はぶっ飛んでいるだろう。私はマンヴィルの女傑の造型が全編で一番面白かった。また、幻覚イメージは、序盤から様々なかたちでお膳立てされていて、例えば、ダニエル・クレイグがテレビ(ブラウン管)のスノーノイズ(砂嵐みたいなノイズ)を見ているショットで彼の顔が小さく揺れるようなエフェクトがかかっていたり、若くて綺麗な青年ユージーン−ドリュー・スターキーに対するクレイグの欲望−頬を撫でたり、肩にもたれたりする二重露光の幽体離脱イメージも、終盤の幻覚に繋がっていくものだと思う。
また、これら画面造型の面白さは、もうグァダニーノ組と云ってもいいサヨムプー・ムックディプロームの貢献が大きい。上述の幻想幻覚の画面化といった部分だけでなく、夜の舗道を歩く人物の横移動ショットや屋内シーンにおけるクレイグの仰角ショットの多用などでも35ミリフィルム撮りの触感と発色がよく発揮されていたと思う。クレイグのヤキモキする感情がしっかり定着していたというか。
ただし、クレイグがヘロインをスプーンであぶって注射するまでをワンカットで撮ったシーケンスショットをはじめ、キャッチーなシーンだが、冗長にも感じられる部分が後半になって多く見られるのは本作のバランスの悪さを感じる。ジャングルでの幻覚(特に幽体離脱し互いに皮膚の下に腕が入ってまさぐる部分など)も長い。あと、「シップ・アホイ」の常連で、クレイグの友人−ジェイソン・シュワルツマンのキャラを私は可愛らしいと思ったが、これをどう受け取るか。そしてデヴィッド・ロウリーが、序盤でゲスト出演のように出ているのだが(クレイグが殺人事件の新聞記事を読むシーン)、これにはちょっとショックを受けた。ロウリーがグァダニーノの友人ということ自体もショックだ。
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