[コメント] 無名の人生(2025/日)
冒頭パートは木版画だろうか。階調のついた無彩色ベースに人肌だけ淡い彩色がほどこされている。以降、日本画様式を踏襲したような平板なトーン&マナーの絵面のモンタージュを推進力にしてスクリーンの画角や色彩、タッチを変化させながら主人公の虚無が描かれる。
過剰な感情や情報や展開の説明を避けて、プリミティブな“画面”の饒舌さを信頼しきった潔さとスピード感が心地よい。全10章の連作短編として語れる主人公の人生は、下世話な実社会の世情を反映させながら、ときに過激にそしてファンタジックに飛翔する。
シナリオ無しで、おそらく鈴木竜也監督の創造力の成せるままに突き進んできた主人公の数奇なドラマは、クライマックスからエンディングに向けて(今まで封印していた)いささかウエットな情緒が勢いに任せてイメージの洪水となって溢れ出す。その奔放さは自主制作の長所でもあるのですが、終着点を見失い歯止めが効かなくなっているようにも見えました。
次回作が楽しみな作家さんです。
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