[コメント] か く し ご と(2025/日)
新潟県立清鈴高校。クラスメートの5人(男子2人と女子3人)が主要キャストで、2年の春から3年の夏までの期間が描かれる。上に書いた2人−京とミッキーの他には、京と親友のヅカ−佐野晶哉、女子2人はパラ−菊池日菜子とエル−早瀬憩。それぞれ、人の気持ちが見える。
人の気持ちの見え方は、5人とも異なる。また案外曖昧なレベルと思う。「!」「?」「…」で見える人がいたり、「+」と「−」のバー、あるいは、鼓動が数字で見えたりとか、トランプの4種類のマークだとか、恋心のベクトルが矢印で見えたりとか。これは人の気持ちを気にして生きる、我々の感受性のメタファーだろう。このレベルなら、記号ではないが、ある程度見える(認識できる)という人は沢山いるのではないだろうか。でも、5人に共通しているのは、誰も自分の気持ち(本心)が分からない、自分の記号は見えない、ということだ。
画面の特徴で特筆すべきは、まずは学校内の背景が木目調、茶色、褐色が目立つという点だ。窓からの白い光も使われるが、教室の窓下の板張り、道場の板壁、体育館の床や壁もそう。あるいは、人物の靴だとか服の一部(例えばヒーローショーの場面のミッキーの服)なんかも茶色や赤が印象的だ。また、大事な会話シーンでは手持ち(ハンディカメラ)が使われる一貫性も指摘できるだろう。例えば、ホテルの部屋でのパラとヅカの会話シーン(お互いに自分に似ていると思っていることが分かる)。夜の商店街を歩きながらの京とエルの会話などなど。
また、5人の主要キャストは全員がバランス良く(勿論、役柄と出番の多い少ないの整合を取ったカタチで)キャラ立ちするよう演出されていると感じた。最初は役者で云うと奥平と出口のダブル主演だろうと予想されたが(勿論、それは否定できないが)、他の3人も同じぐらい目立つ良い場面があると思う。私は実を云うと、『違国日記』で目に留まった早瀬憩−エルを秘かに注視していたのだが、本作で初めて見たパラ−菊池日菜子がとても面白いと思った。あと、プロット構成で腑に落ちない点をあげるとするなら、一番にエルの心持ち、ということも書いておきたい。彼女が好きなのは誰か、という点はミスリードする演出だろう。結局5人全員の「かくしごと」が描かれていると云えると思うが、最終的に、観客には隠蔽された、ラストの京−奥平の科白が一番の「かくしごと」かも知れない。
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