[コメント] 絶望の日(1992/ポルトガル=仏)
クレジット開けはペンで手紙を書くショット。次に走る馬車の車輪の俯瞰を、これも延々と映す。オフ(画面外)で、娘に宛てた手紙を読む声。しかも何通も読む。森の中を馬車が奥へ走って行く。風で揺れる木々(松林のように見える)。
最初に人物が映るのは、部屋の中でカミーロ役の俳優−マリオ・バローゾ(本作の撮影も担当している)が、自身の名前と役名を名乗るシーン。次にアナ役の女優−テレサ・マドゥルガが名乗り、カミーロとアナのことを解説する。以降、2人が役になり切ったフィクション部分と、当時の記録を解説するドキュメンタリー部分が繋がれる。全体、女優の解説シーンが多い。ロケ場所は、カミーロの住居、今は記念館になっている建物とのこと。2人とも、解説者としてのシーンでは現代的な衣装を着ている。例えば、19世紀らしいドレスを着たアナが、階段を上るシーンがあり、この後、現代的なワンピースの彼女が出てきて解説したりするのは面白い。
タイトルは、目を患ったカミーロが、高名な眼医者に何度も手紙を出して懇願し、やっと診察してもらえた日のことを指していて、この医者はディオゴ・ドリアが演じている。全編(それは俳優の解説によるドキュメンタリー部分も含めて)、妥協を許さない演出で徹底されているように思えるが、この眼医者とのシーンはその最たる部分だろう。画面造型という点で特筆しておきたいのは、沢山の蝋燭の光の中で執筆活動をするカミーロの場面だ。確か14本でも足りないと云う。あるいは、カミーロの支援者(友人)としてルイス・ミゲル・シントラがワンシーンだけ出て来るが彼のシーンもローキーだ。
あと、息子ジョルジュの絶叫シーンの窓と影の演出、窓にマロニエが打ち付けられるのを見て叫んでいるとのことだが、こゝだけ、高速度撮影も使った特殊なエフェクトがかかっており、突出した造型になっている。私はこの部分には違和感を覚える。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。