[コメント] テイクアウト(2004/米)
借金返済を迫られたミン(チャールズ・チャン)が雨降る夜の街を自転車で奔走するさまが、喧騒のなかの孤独な遠景や画面をはみ出さんばかりのアップで、慌ただしく注文をさばく女店主や調理人とともにブツ切りされたダイナミックなカットの連鎖として延々続く。
その揺れ続ける手持ちカメラに納められた一瞬たりとも“動き”が止まらない映像の連鎖から、主人公の“懸命”さがヒシヒシと伝わってくる。
荒らしく直截的でシンプルなショーン・ベイカーの語り口に驚かされた。現在(2025年)のベイカーの、登場人物たちの境遇と個性を丁寧に描きながら、あるきっかけで物語に一気にドライブをかけて見る者の心を揺さぶる演出手法とは真逆のアプローチだ。
一方、監督第二作にしてベイカーがこだわるテーマのひとつが“労働”だったことが良く分かる。20年前の本作以来、2024年の『アノーラ』に至るまで、ベイカー映画の主人公は世間では「裏側」とされる職業に従事する人々の物語だ。その弱者に向けられる視線は、アプローチは違えどもケン・ローチの問題意識と通底する。
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