[コメント] バレリーナ:The World of John Wick(2025/米)
とりあえず、残念ながら超えてはいないと断言せざるを得ないが、それでも、ハードルを下げて見たからかもしれないが、期待以上の満足は得られたと思う(映画の評価は極めて私的な期待度と満足度との関係だ)。
冒頭プロローグからして斜光の扱いと仰角ショットがいいと思う。ガラスの中でバレリーナが回転するオルゴールと「白鳥の湖」が早々に提示され、ラストまでこのイメージが引っ張られる。題名から既に予想できるように「タルコフスキー劇場」が重要な位置づけで描かれていて、ディレクターのアンジェリカ・ヒューストンが目立つ良い役だ。ただし、少女時代からリレーキャストしたイヴ−アナ・デ・アルマスの序盤の訓練場面は平板な出来だ(その成長の見せ方は、お座なりなものだと感じる)。最初の仕事、クラブで東洋人女性を守る場面も、アルマスのアクションは、確かにカッコいいけれど、例えば『ノー・タイム・トゥ・ダイ』を凌駕するとは思えない、つまり吃驚するレベルではない。
最初に目を瞠ったのは、イヴが仕事を終え、後始末して引き上げる(何体もの死体のナイフを抜いて表に出る)場面から始まるシーケンス。自動車に乗って路地を画面奥へ走る。これをクレーン俯瞰で見せるショットだが、唐突に画面奥から出て来た車に側面衝突され、発信した地点まで、路地を押し戻される(その最中にも銃撃が始まっている)という演出だ。このショットは面白い!
お次はプラハのシーケンス。こゝでは、銃器店での手榴弾を使った演出が出色の出来と思う。鋼のドアやテーブルが都合よくあり、活用されるというのは半分ギャグのような面白さもあり、アクションシーンとしてもよく考えられている。あるいは、その前の、ホテルから脱出した直後のシーンで、道路の向こうの惨劇を、大きな車が走ることで巧妙に隠蔽する演出があり、私はちょっとキートンを想起したのだが、別のシーンで『キートンの蒸気船』の家の壁が倒れるショットが挿入される、ということも書いておきたい。
そして、終盤の雪山の村でのクライマックスだ。まずは、沢山の白い皿に埋まった拳銃をどっちが先に見つけるか、というシーンが面白いと思ったが、やっぱり、火炎放射器対決が一番の見せ場と云っていいだろう。こゝは真俯瞰も繰り出して、前作で最も瞠目した、火を噴くショットガンを使った屋内殺戮シーンも彷彿とさせてくれたのだが、本作の火炎放射のシーンも、もっと真俯瞰で長く見せても良かったと思った。火炎の描写は実にスペクタキュラーだが、シチュエーション的な差異もあり、前作のような狂気的なレベルにまでは達していないと感じた。
#NYコンチネンタルの場面でシャロン−ランス・レディックが出てきたのは、CGかと思ってしまったが、随分前から撮影に入っていたのですね。2022年の11月には撮影が開始されていたとのこと。
(評価:)
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