[コメント] 8番出口(2025/日)
赤ちゃんの泣き声が聞こえ、左にパンすると、画面奥の椅子に座った母親と抱えられている赤ん坊が視認できる。前に立っている男性が、うるさいと怒鳴る。右にパンしてドアの窓に映った二宮和也(これもミタメ)。列車が駅に着き、ミタメのショットは移動してホームに降り、ホームから階段を上る。ステディカムか。電話がかかってくる。女性の声。病院にいる、妊娠してた、別れようって云ってたとこなのに、みたいな会話。電波が悪くなり切れる。2階分ぐらい階段を上り、改札を出て、地下道を進む。8番出口の行き先表示板。会社員っぽいおじさん−河内大和とすれ違う。この地下道をぐるっと回ってくるのを3回ぐらいミタメのまゝ繰り返して、カットを換えるのは、二宮の正面バストショット。無限ループだと気づいた彼の顔だ。
とても面白く見た。良い点をあげたい。まず設定的な部分で云うと、二宮が喘息持ちというキャラ設定がいい。特に前半のスリルに機能する。無限ループの中での「異変」探しについて、最初「異変」は大袈裟な言葉だと思った。それは、間違い探しレベルから始まるからだ。徐々に明らかな怪現象や災害レベルまで繰り出すのは、恣意的過ぎて違和感も覚える。ただし、前作(監督デビュー作『百花』)もそうだったが、ホラー以上にディザスタームービーへの志向を感じさせるのは、一貫していていいじゃないか。クラシック音楽、ボレロとかドビュッシーの「夢」の使い方も前作の「トロイメライ」同様に品がいい。あるいは、黄色にこだわった色遣いも前作からの一貫性のある志向と思う。
細部の演出だと、歩く男−河内のパートにだけ出て来る女子高生−花瀬琴音が面白い。この部分はとても清涼効果がある。のみならず、地獄とか煉獄とかの冗談もいいし、彼女が二宮とすれ違っているようなことを仄めかすのもいい。河内との切り返しのカッティングも切れがある。あとは、小松菜奈の横顔アップショットで彼女が病院にいると思わせておいて、異なるかたちでロングショットに繋ぐ演出にはハッとさせられたし、『シャイニング』みたいな画面外からの水の出現から津波のような惨状になる場面に続いて、浜辺の大俯瞰(真俯瞰)が繋がれるカッティングも、一瞬何が映ったのか判別できない驚きと、緩急の緩があり、効果的だった。作劇としての子供の扱いは感傷的に過ぎる(かつ少々お説教臭い)とも思うけれど。
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