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[コメント] Dear Stranger/ディア・ストレンジャー(2025/日)

本作も力のある作品だ。この画面のパワーは侮れないと思う。緩みのない演出−画面造型の力に興奮し続けながら見た。ファーストショットはアパートの外壁というか、その窓を外側から撮ったロングショット。
ゑぎ

 会話が聞こえる。カイという名前。次に自動車の中。運転する西島秀俊。助手席にグイ・ルンメイ。後部座席に幼児のカイがいる。後のシーンで4歳という科白がある。ルンメイとカイは父母の店(コンビニ)で強盗に会う。大学で講義する西島。内容は廃墟について。夜、雨の中、店に車で来る西島。本作は、廃墟の映画。あるいは夜の雨の場面の多い映画でもあり、西島が乗る自動車−スバル・レガシーの映画だ。このカラースプレーで落書きされた車が、プーリーの異音をずっと鳴らしているという設定も、私はすこぶる面白いと思う。成瀬の『稲妻』で小沢栄が乗っている原付バイクの音の使い方を想起してしまった。

 そして人形劇だ。最初にルンメイが自室で小さな(と云っても1メートル弱ぐらいの)人形と芝居する場面を見た時点から瞠目する。人形の表情に震撼とさせられたのだ。さらに、ルンメイが中に入って操作する大きな(2メートルぐらいの)被り物のような人形のスペクタキュラーなこと。この趣向がなければ本作の魅力は半減しただろう。また、西島が廃倉庫のような建物に、塀を乗り越えて入っていくと、そこは放置された劇場で、真っ暗な舞台上に、まるで怪物のような衣装を着た演者が見える。このような西島の幻影の造型も、メインプロットとの連関は希薄だが、私は本作の魅力だと思う。路上を歩く大きな人形(ルンメイが中に入って操作していることも画面で示される)のイメージショットしかりだ。

 例えば、グロッサリーストアで、カイがいなくなり、捜すルンメイの場面では、もっとサスペンスを盛り上げることができるだろうと思ったし、こゝで窓の外から母子を見つめる男−ドニ―の描き方も食い足りなさを感じてしまう。あるいは終盤の西島の振る舞いには首肯し難い独善性−自分勝手さも感じられるが、だからと云って、これらの点が、本作の興奮を大きく損なう要因ではないというのが私の感覚だ。

 大学構内でカイの姿が見えなくなり、必死で捜す西島と、人形劇団のリハーサル−ルンメイがディレクションするシーンをクロスカッティングで繋ぐ演出や、人形劇の本番公演後、バーカウンターの西島の横にルンメイがやって来て、西島は彼女を振り切って外に出、ルンメイが路上ですがる場面なんかも良い画面造型だと思う。そして、終盤のカークラッシュにも度肝を抜かれるし、いや何と云っても、西島とルンメイの2人を全く拮抗するレベルで立たせている演出に満足感を得る。特に、このルンメイの複雑さの造型には、真利子哲也の変貌を感じる。

(評価:★3)

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