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[コメント] あこがれ(1957/仏)

まさに鮮烈なエロチシズム…あるいはフェティシズム?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 『大人は判ってくれない』(1959)で鮮烈な長編デビューを果たす前のトリュフォー監督の短編作品。この時代にこれを作れたという、その事実だけでとんでもない事だと思える。

 映画の中心はこの時代でもハリウッドで、むしろハリウッドが最も輝いていた時期に当たるのだが、ミュージカルや、大人の恋物語はお手の物とは言っても、人間の持つ複雑な感情をそのまま画面に出すという事はまるで出来てなかった。いやむしろ作り出された虚構こそが映画である。という意識に溢れていた。

 ここで人間の心理を、飾ることなくそのまま画面に出す事が出来たのは、やはりフランス映画が映画史の先を行っていたという事実であろう。そしてそれをしっかりと映画化してくれたトリュフォー監督の実力を改めて知らされた感じである。

 子供にとっての恋というのは、憧れから始まる。そしてその感情は、説明が付かない分過激化していき、時としてシャレにならないものになっていたりするのだが、子供の残酷性というのもよく現れている。

 それより本作で際だったのはエロチックさだろう。もやもやした感情をどうする事も出来ず、自分の理解出来る範囲で行動を示そうとした結果。それがあの自転車のサドルの香りを嗅ぐシーンに結実している。全く性的なものが無いのに、もの凄くエロチック。優等生ぶりを見せるハリウッドでは到底出来ないシーンをしっかり作ってくれた。それだけでも充分である。

 元々トリュフォー監督のファンではあったが、これだけ鮮烈な作品が作れる人だと分かって、改めてファンで良かったと思えた作品。

(評価:★4)

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