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[コメント] 女優須磨子の恋(1947/日)

本作はもう田中絹代の独り舞台のようだが、溝口健二も田中も大真面目だったのだろう。しかし今見ると作為的に戯画化された演技・演出を見ているように思えてくる。正直、変です。唐突に彼女が踊る稽古シーンが挿入されたときなんて笑ってしまいました。
ゑぎ

 実は溝口らしい縦構図の空間演出も余りない。予想に反して演劇シーンも平面的な画面が多い。ただし、須磨子が稽古の帰りに帰宅するシーンも、最初の公演の後、須磨子の家に島村抱月−山村聡が初めて訪れるシーンも、カメラは家の中に入らず、表(建物外)からの視点で、しかもかなりのロングのフルショットで屋内の人物を捉えるという突き放した演出。或いはこのシーンもその後も、ラストまで徹底して須磨子と抱月の濡れ場を演出しない潔さ。この辺りは溝口らしい厳しさとも云えるが、半面、二人の関係性が薄っぺらく感じる弊もある。

 演劇を映したシーンではラストの「カルメン」が圧巻。

#備忘

・クレジット中「ゴンドラの唄」(命短し恋せよ乙女)がコーラスで流れる。ファーストカットは山村聡が教壇で教える正面バストショット。「私ももう42だが」というセリフがある。

・坪内逍遙は東野英治郎。友人の中村に小沢栄太郎。「養子根性は家庭だけで」というセリフ!「人形の家」の相手役は土肥春曙。演じるのは青山杉作

・抱月の妻は毛利菊江。その娘は朝霧鏡子。毛利の母親に東山千栄子。毛利は相変わらず怖い怖い。

・後に新国劇を旗揚げする沢田正二郎が離脱する場面がある。旅回りの列車の中、後の席で「こんなこといつまで続けるんです?」と聞く男が千田是也か。全然目立たない役。

・カルメンの相手役は「中山君」と呼ばれるが、中山晋平のことか。

(評価:★3)

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