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[コメント] 2001年宇宙の旅(1968/米=英)

赤ん坊は血まみれの天使 (神) か神の使いか。
Ikkyū

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「新たな人類」に未来を託すお話です。物語を辿っていきます。

原始時代。道具を使って人間は地上を支配しました。

1961年。機械を使って宇宙に進出しました。

2001年。科学は人類の希望です。 調性の取れたクラシックとパンフォーカスの効いた画面は幾何学的な美しさが現れています。 「神」に与えられた知性の栄光と調和です。

2001年。ハルが反乱を起こしました。 支配する立場であるはずの人間が殺されていきます。

しかし人間のやってきたことと同じです。 知恵を働かせて自分の生命を守り他人を殺してきました。 理性を使って共産主義を考えましたが多くの人間が死にました。

人間はHALと同じです。

××××(年)。ボーマン船長は生命の歴史を辿り 死に 生まれ変わりました。

赤ん坊は希望の象徴として演出されています。 ですが進化とは環境への適応であり自分を生かすための機能です。時間や空間を越える力を獲得した赤ん坊はいずれ殺し合いを始めるかもしれません。

「力の扱い方」が考え所です。次元の違う存在に進化したのはわかりますが「どう」変わったかは明瞭でありません。笑顔を振りまく血まみれの無慈悲な天使(神)かもしれません。

あるいは神の使いかもしれません。原始時代の骨に始まり宇宙船、HALそして赤ん坊と「神(モノリス)に導かれて人間は進化している」歴史観だからです。

つまりややもすれば反省しないスタンスです。歴史を段階的な発展の積み重ねと考えているからです。

キューブリックさんの「科学的に定義された神」という表現も同じです。人類は進歩という直線的なレールの上を歩いて完全な存在に近付いている、という思考です。また本人は意図せずとも「神は間違えない。世界は完全である。」という形而上的な神も頭にあるかもしれません。

ところで 本作の後世への影響は計り知れません。 たとえば『ボトムス』(1983-1984)『ライブアライブ』(1994)『エヴァ』(1995-)『ゼノギアス』(1998)『インターステラー』(2014) 等があります。

2001年で進化の在り方についての明言はありませんでしたが これらの作品を手がかりとすることもできます。 一つ確かなことは 理性と知恵だけでは問題を解決できないという事です。

世界は進歩していないかもしれませんが物語は進化しています。それが希望です。

2001年のスターチャイルドは世紀を超えて生まれています。

◎画面 ◎音楽 ◎脚本

(評価:★5)

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