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[コメント] ダブルベッド(1983/日)

白球がコンクリートの護岸に守られた川に落ちていく。陳腐な演出だがどきどきさせられる。全共闘の生き残りの男たちと「生き方」を模索する女たち。藤田敏八の手腕が際立つ一品。
sawa:38

★「あの時代に死ななかったんだ。生き延びるしかないだろう」

全共闘の生き残りの男たちが自嘲する。

★「誰の子供かって聞かないの?」「誰の子だ?」「あたしの子!」

80年代の女性は強く言い切る。

★「ねぇ、乗せてって」「どこまで・・」「(行く先は)これから決めるわ」

夫も子供も捨てて、女は出前持ちのスクーターで去っていく。

藤田敏八にしては妙な閉塞感は無い。70年代のギラギラした「暑さ」でなく、しとやかな、だがカラッとした「暑さ」が伝わってくる。

「女の自立」だとか「女性解放」だとか野暮なことは言いたくない。岸部一徳柄本明のふたりの男が心に残る。全共闘の内ゲバを生き延びてきた男たちの生き様。

教え子の女子中学生と心中する者、TVプロデューサーとして浮気を続けるサラリーマン、売れない作詞家として気ままに生きる男。

彼等が学生時代に恐らく熱く語ったであろう将来の姿はそこには無い。「挫折」とか「転向」とか一般的に総称される男達。それに対し女たちの何と自由なことか。

今ではもう振り返ることもなくなった「時の人」中山千夏の原作の映画化だが、あのバブルの時代を経て今再び「負け組み」が世に溢れる現在、まったく古さを感じさせない。

(評価:★4)

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