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[コメント] 波影(1965/日)

プロローグは雨の桟橋。女が歩くロングショット。雨の浜を歩く大空真弓。レインコート姿。海の側の墓地で手を合わせる。大空のモノローグが入り、墓に眠る人のことを「小浜で一番色っぽいと云われた娼妓」と云う。
ゑぎ

 そこに全く唐突に、街中を歩く若尾文子のバストショットを繋ぐのだ。いいオープニングじゃないか。若尾−雛千代は山茶花究に連れられて小浜(若狭)の道を行き、一軒の廓に入る。山茶花のことを、オッチャンと呼ぶ若尾。女将さんは乙羽信子。やり手婆に浪花千栄子。若尾は売られて来たのではなく、自ら志願して(この仕事がしたいということで)、親戚なのだろう山茶花に頼んで娼妓になったのだ。

 大空真弓−世津子は廓の娘(山茶花と乙羽の娘)で、若尾との初めての出会いのシーンは、二階の部屋。屋根を挟んで向かいの部屋同士で会話する。この時点ではまだ小学生の、子役の世津子だが、とても可愛い。世津子が部屋の奥の窓を開けると、海と島が見える。喜ぶ若尾。若尾の天真爛漫さがはじける場面だ。

 若尾が生まれ育ったのは、小浜の対岸の島にある、泊(とまり)という村で、世津子を連れて、舟で泊に渡るシーンが、波に揺れる船上での2人の会話を横から撮ったショットで、これは特記すべき良い画面だろう。

 娼妓の仲間では、冒頭ちらっと塩沢ときの顔が見えるが以降出てこず、序盤は木村俊恵−照子がよく目立つ。働き者で性格もいい若尾とは対照的な、怠け者の娼妓の役だ。中盤には、春川ますみロミ山田石井富子らが加わる。彼女らの働く(寝間での)姿はほとんど映らず、若尾も含めて、着物の前がはだけるぐらいの描写しかないが、皆で海辺へピクニックに行くシーンでは、若尾と大空以外は、上半身裸で海に入る場面があり、春川は、胸が見えるし、スリップ姿で泳ぐ若尾のショットがある。全体に若尾の造型は、出来すぎの「可愛い女」というきらいもあるが、本作の若尾文子がその出演作の中で一番良いと云う映画ファンが多いのも納得する。

 また、若尾との関係ということでは、もう一人重要な人物として大空の兄がおり、中村賀津雄が演じるが、家業(公娼)をさげずみ、自らを卑しめ、ひねくれて反抗するパターンの人物として描かれている。考えると、母親や家業が水商売(レベルもいろいろあるが)ということで親子の確執が描かれる映画が邦画では沢山作られていることを改めて感じた。本作の中村も、かなり鬱陶しいキャラ造型だが、中盤の二階でふて寝している中村を若尾が呼びに行き、もつれて蚊帳?の中に倒れる場面や、船大工の作業場で、若尾が中村に襲われるシーンなんかの鬼気迫る撮影および美術も含めた画面作りはいいと思った。

(評価:★3)

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