[コメント] 異人たちとの夏(1988/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
1980年代を代表する大林宣彦監督はジャンルを問わず様々な映画を作っている。文芸作品もあれば、最も得意とするアイドル作品もある。だが、デビュー作が『HOUSE』と言うだけあって、SFや特撮にも特別な思い入れがあるようでもあり。
ただ、監督の作る特撮作品やSF作品はことごとくファンの神経を逆撫でするようなものばかりで、ジャンル映画好きにはすこぶる評判が悪い…ネタ化されたという意味では貴重な作品をいくつも作ってるけど。
だから本作も実は全く期待せずに見始めて、あれよあれよという間に画面にのめり込んで、凄く良い印象を受けた。
確かに私は親と子の関係回復を題材にした物語がとても好きで、それが作用したのは認めるし、言うまでもなくホラーや特撮と言ったジャンル映画も好きだから、その組み合わせで気に入ったと言うのも認める。
しかし、そのつなぎは決して良いとは言えないし、場面場面で私が最も嫌っている80年代邦画的特色が鮮明に出てくる。だから何故こんなに気に入ったのか、長いこと分からないまま(意地で「これは面白くない」と言っていた時期もあった)。
ただ、気に入っている理由が自分でも分からないと言うのがとても気持ちが悪い。
それで、レビューするに当たり、作品データを改めて調べ始めた途端、疑問が氷解。
なるほど。脚本が市川森一だったのか。
実に単純。それだけのことだった。
この人の脚本、ある意味では私が子供の頃から慣れ親しんでおり、更にこの人の脚本作品はとても好きなものが多い…何が?と言うと、実は市川は帰ってきたウルトラマンとウルトラマンAでの脚本家で、しかも子供心に印象に強く残っている話は改めて調べてみると、多くは市川脚本の作品だったという事実。
そして改めて今思い出してみると、本作にも市川流のケレン味が多数出てきていることが分かる。人を思いやり、自己犠牲に踏み切る描写なんかはヒーロー作品そのまんまと言っても良い訳だから。
改めて分かってみると、とても気持ちが良くなった。面白いと思ったのには、ちゃんと理由があるものなのだ。うん。
これまでお笑いコメンテーターであった片岡鶴太郎が意外にもしっかり演技が出来ることが分かったことも大きい。実際本作を契機に役者業へと移っていくことになる。
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