[コメント] 楢山節考(1958/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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老人問題が社会問題になる前にその先駆けとして作られたような作品で、社会的にも大きな衝撃を与えた作品。日本古来の“姥捨て”という因習について鋭い視点からドラマ化を果たしている。
ただ、本作の狙いは「日本にはこんな野蛮な風習がありました。お年寄りは大切にしましょう」というものでは決してない。むしろその事実を淡々と描くことによって、観ている人間に考えさせようとしたのだろう。実際本作での田中絹代の名演ぶりはたいしたもので、前歯まで抜く熱演ぶりを見せているが、ほとんどの場面で表情を変えず、運命をそのまま受け入れる女性を好演している。その静かさぶりが観ているこちら側にはかえって感情を露わにするよりも鬼気迫るものに感じさせられる。
果たして姥捨てというのは、本当に単なる“悪”なのだろうか?自分自身で死ぬ時を定めるのこそが、人間に残された最後の自由なのかも知れない。
それに演じているのが静かだからと言って、画面そのものが静かではないのが特徴でもあろう。オールセットで撮られている上に、言葉の使い方とか歌舞伎調で演出してるので、台詞回しなどは結構躍動感がある。
それがリアリティを損なってる部分も確かにあるのだが、逆に考えると、「これはあくまで作り物」という点を強調しようとしてなのかもしてない。
内容、人気共にトップクラスであり、ヴェネツィア国際映画祭出展の最有力候補とされるが、『無法松の一生』に逆転されてしまう。
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