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[コメント] 人間の條件 第3部望郷篇・第4部戦雲篇(1959/日)

一見軍隊の残酷性の嵐に翻弄されているように見えて、その実、梶は過度に恵まれている。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







確かに梶は、主義主張を通そうとするために古参兵には苛められるが、ちゃんとそういう彼を理解する人物は廻りに多数おり、その上能力にも秀でている。そして決定的なこととして、戦地に程近い駐屯地まで面会に訪れる妻がいる。

そうでありながら、戦争の無意味さについてだけ悩んでいられる梶は幸せ者の一語に尽きる。マリオネットのように上官の命に絶対的に従っている新兵たち、そして己のやり切れなさを解消するために新兵たちをいたぶる古参兵たちも、梶に較べれば絶対的に弱いのだ。

梶はそんな強さを持ちながら、過失で部下を死に至らしめたことに煩悶する。彼は自分の弱さに悩んでいるのではない。強いがゆえにその不完全さに悩むのだ。

彼にはやはり感情移入はできない。

(評価:★3)

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