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[コメント] 香華(前編・後編)(1964/日)

映画から、明らかに自分とは違う人格が立ち上がる。そこにホロリとくる感動と感激。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 自分とはまったく違う生き方だ(当然だ)が、自分の中にも同じ性分が幾分かはあるということなのか、理解できて、ホロリとくる。いずれにしても、映画から、一つの人格が立ち上がってくるのは確かだ。

 ◇ ◇ ◇

 因習のしがらみに絡め取られながらも、否、その枠組みの隙間を縫うようにして、自己の欲望を追求し続ける母(乙羽信子)。借金の形に置き屋へ売られたのに、“男はん”にチヤホヤされたあの女郎時代が一番良かったと懐古するのだから、まったく恐れ入るほかない。

 その母を反面教師としたかのような、抑制的で生真面目な面を持つ娘(岡田茉莉子)。母にとことん人生を翻弄されながら、どこかでこの縁を受け入れるしかないと思い定め、母とともに生きていく。

 ここには、時代の荒波に揉まれ、抗いつつ、自分なりの行き方を貫いた、一つの人生がある。このような、凛とした生き方を成立させ得た時代、というものについても、思わざるを得ない。

 男としては、“惚れた女”への忠節を、自分の意思で、終生貫いた八らん、また主人公と加藤剛との再会を、そんなことする義務もないのにお膳立てした、影の演出家である一お役人の存在が、忘れ難い。

80/100(13/04/15記)

(評価:★4)

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