[コメント] ハイランダー 悪魔の戦士(1986/米)
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B級アクション映画ながら後世のフィクションに与えた影響、功罪は大きいと感じる。特に「たとえ核兵器のある時代でも、世界の命運は(律儀にも)剣戟で決まる」という物語の掟(コード)は様々な作品に影響を与えたと思う。作劇につきまとう枷を外してしまったようなもんなので、功もあれば罪もあるだろう。
冒頭が素晴らしい。当時の最新機材スカイカムで自在に撮影されたMSG(マジソン・スクエア・ガーデン)の巨大な空間。ショーアップされたWWF(現WWE)のプロレスからMSG地下駐車場での死闘へとつながる展開は『ターミネーター』(1984)の影響なんじゃないかとオレなんかすぐに思ったのだが、脚本が書かれたのは『ターミネーター』公開以前らしい。初稿の構想では冒頭はアイスホッケー観戦だったという。ロケの前にNHLにNGを喰らったので、やはりMSGをホームとするプロレス団体WWFに変更になったのだ。この変更は僥倖であった。冒頭に「闘いのデフォルメ」たるプロレスを見せることによって、以後の剣戟は殺伐リアルな真剣ですよという態度を「偽装」することができたからだ。実際はこの映画の殺陣はヘナチョコのへっぴり腰で、ラッセル・マルケイの才気による大胆な撮影照明と派手なエフェクトでどうにかごまかしてるにすぎない。しかしプロレスとりわけタッグマッチとの対比という文脈上の「仕掛け」が効いているので、観客はチャンバラを「プロレスとは違うシリアスなもの」として誤認する。ショーアップされた超満員のプロレス興行に対して世界の命運を決める闘いが人知れず無人の駐車場で行われている、という架空の図式を観客が受け入れられるよう設計されている。ホントはプロレスの方が遥かに体を張ってて危険なんだけどな。
物語の本筋たるマクラウドの中世/現代のロマンスには魅力がなく、最もグッとくるのは第二次大戦の戦災孤児の少女との短いエピソード。実にいただけない。脚本はなんとなく面白そうなシーンの羅列で出来ており、まあこの不死者の設定からしてそうしたくなる気持ちも判るんだけど、これの行き着く先は本当にひどい『ハイランダー2 甦る戦士』だ。続編がひどかったので以後のシリーズは観てないが、新作ハイランダーのたびに駆り出されるクリストファー・ランバートの役者人生がググッとB級寄りに曲がっていったのは気の毒だった。
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