[コメント] ナイト・オン・ザ・プラネット(1991/米)
ジャームッシュの映画作家としての野心が剥き出しになっている。それは世界の五都市を舞台にしたオムニバスだからでもなければ、自身が使えない言語の映画に挑んでいるからでもない。全篇が夜という映画的蛮行。タクシーというきわめて狭小な空間をいかにして映画的空間に変容せしめるかという挑戦。
タクシーの車内構造とバックミラーを利用した「等方向(前方)を向いた者同士の切り返し」は面白い(まあこれを切り返しと呼ぶことが妥当なのか分からないけど)。とりわけパリ篇での、盲目のベアトリス・ダルとバックミラーを介して彼女に窃視的視線を送る運転手イザック・ド・バンコレとの切り返しはユニックだ。切り返し自体がこの篇の主題にまでなっていると云えよう。夜の撮影も概ねすばらしい。ニューヨーク篇の運転手アーミン・ミューラー=スタールが笛を吹いたときに画面いっぱいに広がる幸福感も忘れがたい。
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