[コメント] 獅子座(1959/仏)
いやぁ凄い映画だ。御伽話として、ほとんど完璧じゃないか。初期ヌーベルバーグらしい、ロケ撮影と同録の多用で作られているのだが、室内における演出や画面造型、カッティングなんかも見事に名作然としている。
怖いぐらいよく出来ている。短いディゾルブ繋ぎ(時に長いものもある)、陰鬱な劇伴も含めて、プロットの悲劇性を醸成することに最大限に奏功していると思う。
主人公のジェス・ハーンが大柄なオジサンで、華奢な若者ではないというのもヌーベルバーグらしくなく、違和感と云ってもいい突出した感覚がある。中盤のパーティシーンでは、ゴダールが出演しており、科白無しだが、よく目立つというのも興味深い(レコードをかける男)。あるいは、ホテルの女主人役でステファーヌ・オードラン、巴里祭のシーンでダンスするのは、マーシャ・メリルだ。2人ともチョイ役だが、やっぱり印象に残る。マリー・デュボワもカフェの女性役で出ているらしいが、これは私には判然としなかった。女優だと、ちゃんと役名のある、本作の後、『ハタリ!』にも出演することになるミシェル・ジラルドン(ドミニク役)もとても可愛い。
終盤に向かって、ジェス・ハーンを延々と歩かせながら、どんどん服(ズボンや上着)が汚れていく見せ方も、私は実に面白いと思った。右足の靴底が外れる、靴を紐や布で縛るが、すぐにほどける、といった描写がいい。さらに川岸に倒れたハーンから大俯瞰へ繋ぐセンスも図抜けていると思う。ちょっとイケズ過ぎる演出だが、こゝが本作の白眉だろう。カフェ(ドゥマゴ)の前での、ホームレスの男との大道芸のような芝居を挟んで、宇宙(タイトルの獅子座か)のショットで収束するエンディングも度外れていると感じる。映画という御伽話としての完璧な帰結じゃないか。ほとんど神話。
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