[コメント] 花と嵐とギャング(1961/日)
しかし、全体の出番の尺としては高倉が主人公で、鶴田は脇役レベルに思える。もっとも、出番は少なくても、神出鬼没に登場し、要所を締める鶴田も、美味しい役ではある。
女優としては、小宮光江と新井茂子の2人がヒロイン級の扱い。いずれも目立つ良い役だが、小宮は鶴田の妹で高倉の妻、という姐さん役で、押し出しも良く、この人をもっと見たいと思わせる活躍ぶりだ。高倉と会話しながら部屋のカーテンを閉めていき、ベッドに誘うシーンがいい。照れ顔の高倉。あるいは、小宮が江原真二郎と曽根晴美を銀行強盗の仲間に誘う場面は、大した貫禄だ。ちなみに、本作の曽根(ウィスパーという役名)も、とても目立つ。よく動く表情の演出がいいからだ。
銀行強盗シーンもミニマルだが、タイトに見せる。直前に土砂降りになるという展開も良く、何よりも、銀行前の通りと行内の空間をムダなく見せ、あっという間に強盗シーンにケリをつける演出の早さがいい。空間描写で云えば、神戸の会長-佐々木孝丸の邸の場面で、屋内の構造をちゃんと見せるのにも驚いた。階段や、庭を挟んだ浴室など。あるいは、終盤の牧場から、高原を舞台とする銃撃戦でも、高低を活かしたロングショットがよく撮れている。
カット繋ぎの演出の特徴として、人物が歩いて来てカメラに近づき、一瞬黒画面を入れ、カットを変える、という繋ぎを何度も行う。新東宝時代からの石井輝男の得意技でもあるが、ちょっとやり過ぎのように感じる。口を尖らす新井茂子から、同じような表情の小川守(鶴田の弟役)へのマッチカットなんかは、才気走ったカッティングだが。
#備忘でその他の配役等を記述します。
・小宮のバーの壁には、シナトラの大きなポスターが貼ってあり、何度も映る。小川守が命じられて、河川敷で殺そうとする相手は、潮健児。鶴田、小宮、小川の母親は清川虹子。普通の母親ではない。大姉御という感じ。高倉が刑務所にいる間に幹部になっていたツンパ(役名)は、沖竜次。銀行強盗シーンで、行内にいる客の中に八名信夫がいる。横浜港?ヨットの場面で、鶴田の女として謎の外人女性が、こゝだけ出てくる。後半に殺し屋として出てくる男たちの中に、山本鱗一。
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